技術としての「Docker」は、コンテナ革命を起こしたことで知られている。また、企業としてのDockerは、その技術をうまく収益化できていないことで知られていた。そうした中、OpenStackやKubernetesを中心とするクラウドソフトウェアを提供する企業Mirantisが、「Docker Enterprise」の製品ラインとその関連事業、および開発スタッフを買収したことが明らかになった。今回の買収が起きたのは、Dockerの最高経営責任者(CEO)Rob Bearden氏が必要な資金を調達できなかったためだとみられる。
買収契約はすでに成立している。Mirantisの共同創業者であり、同社のCEOを務めるAdrian Ionel氏は、電子メールによるインタビューで、「買収条件は開示されない。買収契約は水曜日(米国時間2019年11月12日)の午前中に成立した」と述べている。
Dockerは引き続き独立企業として存続する。Ionel氏によれば、MirantisはDockerから次のものを取得する。
- Docker Enterpriseプラットフォーム。これには「Docker Enterprise Engine」「Docker Trusted Registry」「Docker Unified Control Plane」が含まれる。
- 成長中の事業と750社のエンタープライズ顧客。Fortune 100企業の30%、Global 500企業の20%がDocker Enterpriseを利用している。
- 世界屈指のクラウドネイティブ製品エンジニアリング、サポート、サービス、プリセールスチーム。
- Microsoftなどの大手企業との共同事業パートナーシップを含む、強力なパートナーエコシステム。
そのほかの内容については、近日中にDockerから発表される予定になっている。Dockerは今後、コンテナ開発者向けのIDE・プラットフォームである「Docker Desktop」と、コンテナイメージの検索や共有を行うためのサービスである「Docker Hub」を事業の中心に据える。
MirantisとDockerは、アップストリームのオープンソース技術に共同で取り組んで行く予定だという。また両社は、今後も各製品のシームレスな統合を確保していく。
Mirantisと同社が新たに獲得したDocker Enterpriseチームは、引き続きDocker Enterpriseの開発とサポートを継続する。また同社は、将来的にDocker Enterpriseプラットフォームに以下のような強化を行う。
- 管理、統合、運用の負荷を排除した、人間の関与が不要となるようなアズ・ア・サービス体験。
- 「Mirantis Kubernetes」と、関連するクラウドネイティブ技術。
- 強固な財務基盤を伴う、実績のあるエンタープライズビジネスモデル。
最後の項目は決して小さくない問題だ。最近では、Dockerの持続可能なビジネスプラン構築の難しさなどに対して、顧客の不安が高まっていたと報じられていた。
Mirantisは、開発者に対しどのクラウドでもオンプレミスのインフラでも一貫した体験とともにKubernetes-as-a-Serviceを提供するという目標を加速させるとしている。この買収によって同社のKubernetesプラットフォームに新たなエンタープライズ顧客を多数呼び込むことになるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。