SBI証券は、国内で初めてインサイダー取引の審査業務に人工知能(AI)を導入する。導入を支援したNECが9月14日に発表した。2022年度から運用を開始する予定。AIには、NECの「異種混合学習技術」を活用している。
両社は、審査観点が多岐にわたるため審査対象の絞り込みが難しく多くの審査時間を割いていたインサイダー取引にAIを活用することで、審査業務のさらなる高度化、効率化に取り組んできた。
2020年度から実証を行い、判定理由を明示した上で高精度にインサイダー取引の疑い度合いのスコアリングを実現し、一次審査にかかる時間を約90%短縮できることを確認している。
「NEC AI 不正・リスク検知サービス for 証券」の利用イメージ
SBI証券は2019年12月に、AIを活用して相場操縦など不公正取引の審査業務を支援するクラウドサービス「NEC AI 不正・リスク検知サービス for 証券」を導入した。これにより相場操縦取引に対する審査の高度化を進めるなど、デジタル変革(DX)による不公正取引の監視、防止を強化してきた。
インサイダー取引のスコアリングAIの実現イメージ
今回の取り組みでは、SBI証券が保有する数年分のインサイダー取引に関する取引データや重要事実データ等を学習したAIモデルを生成し、インサイダー取引の疑い度合いをスコアリングすることで審査業務を支援する。
これにより、一定の基準のもと抽出した取引データから不公正取引の疑いのある取引を絞る一次審査を効率化できるため、審査担当者は二次審査などより詳細な審査や、より深度ある調査、分析に注力することが可能になった。
また、人間では気づきにくいリスクをAIが検知、可視化することで、新たな観点から不公正取引の防止に寄与することも期待できるという。
NECは、今回の取り組みの成果やノウハウを生かし、NEC AI 不正・リスク検知サービス for 証券にインサイダー取引に対応した新たなメニューを加え、2022年度から提供を開始する予定だ。