2021年も「State of AI Report」が帰ってきた。Nathan Benaich氏とIan Hogarth氏が発表したこのレポートの最新版を紹介したい。
2020年にも、人工知能(AI)の現状を捉えた、おそらくは最も包括的なレポート「State of AI Report 2020」が発表されている。著者はAir Street CapitalとThe Research and Applied AI Summit(RAAIS)の創設者Nathan Benaich氏、そしてAI関連のエンジェル投資家でユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の公共のための革新研究所(IIPP)客員教授Ian Hogarth氏だ。このレポートが2021年、内容をさらに充実させて戻ってきた。
米ZDNetは2021年も両氏にインタビューを行い、2021年版「State of AI Report」の注目トピックについて話を聞いた。
MLOps:機械学習の実運用
米ZDNetに寄稿しているTony Baer氏が指摘したように、相次ぐ新規株式公開(IPO)とユニコーンの増殖により、この市場は1つの独立したセクターへと変わりつつある。これは無視できない潮流だ。
「State of AI 2021」は扱っているテーマが広い。例えば、AI研究、産業、人材、政治の最新動向に加えて、未来の予測にも踏み込んでいる。Benaich氏とHogarth氏は、自分たちの予測が実現したかどうかも追跡しているが、結果は上々だ。例えば、2020年のレポートではNVIDIAによるArm買収の障害や、AIとバイオ関連のIPOを正しく予想していた。
Benaich氏によれば、両氏はさまざまな機械学習関連企業(主に成長の初期段階にある企業)に投資しているため、主要なAI研究機関や学術グループ、注目度の高いスタートアップ企業、大企業、さらには政府関係者とも接点を持っている。この立場を生かして多様な視点を盛り込んだレポートを作成し、公開することにより、両氏はあらゆる関係者に包括的な情報を提供しようとしている。
2021年版の「State of AI Report」から、この1年間に米ZDNetも注目してきたトピックをピックアップして紹介したい。1つ目はMLOps、つまり、機械学習を本番環境で運用するための理論と実践だ。AIの運用に関しては、新モデルの開発競争から、地味だが実際的な側面へと焦点が移りつつある。

提供:Hazy Research, Stanford
機械学習モデルの能力や有用性が高まるにつれて、モデルの改善のみでは大きなメリットを生み出せなくなってきた。このため、機械学習コミュニティの間では、データ関連の実務、もっと言えばMLOps全体を改善することが、機械学習製品の信頼性向上には不可欠だという認識が広がりつつある。