コロナ禍でのリモートワークにおけるオンラインコミュニケーションツールとして有名になった「Zoom」だが、提供元のZoom Video Communications(ZVC)自身は、日常の業務で自社のプロダクトをどのように利用しているのだろうか。ZVC Japan 社長の佐賀文宣氏とISV ビジネスディベロップメントマネージャーの佐野健氏への取材機会を得たので、“中の人”としての使い方や、一般のユーザーにはあまり知られていないという活用方法などを聞いた。
Zoomの利用は、社内外でのオンライン会議や打ち合わせ、オンラインセミナーへの参加といった仕事面を中心に、友人や知人、遠方にいる家族や親戚との対面などプライベートな機会も少なくないだろう。一時期は「Zoom飲み会」という言葉も広がり、多くのユーザーにとっては、誰かにオンラインで会うためのツールという感覚なのかもしれない。
佐賀氏によれば、現在の社員数は、グローバルでは約6000人、日本では約150人であり、ほぼ全ての社員がフルリモートで業務を行っている。当然というべきか、業務でのコミュニケーションは、ほぼ全てがZoom中心になっているとのこと。ただ、一般のユーザーよりも身近な存在であるようだ。
というのも、記者特有の状況かもしれないが、Zoomを使うシーンは社内とは会議や打ち合わせ、社外とは取材が多い。その際には、あらかじめ集合するタイミングを調整しており、メールやチャットなどで招待を受けて、あるいは招待を送ってZoomにアクセスし、「ミーティング」を開始する。多くの場合で、ミーティングを始める前にワンクッションを伴うからだ。
佐野氏は、社内ではミーティングよりもチャットを使う時間の方が長いと話す。「コミュニケーションには同期、非同期があり、非同期のタイミングも多い。チャットでやりとりをしながら、必要に応じてミーティングも利用したり、『Zoom Phone』で通話したりしている」(同氏)という。状況に応じてテキストやビデオ、音声とコミュニケーション手段を切り替えられるツールは多いが、Zoomも同様で、佐野氏はチャットからシームレスにミーティングに切り替えられると説明する。一般のユーザーには、チャット機能の存在があまり知られていないそうだ。
Zoomのミーティング機能は、最大で約1000人がアクセスできる。打ち合わせの大半はミーティング機能で行っているが、全社員や1000人以上の社員が参加するグローバルでの会合には「Zoomウェビナー」を使用しているという。
ミーティング機能には、ユーザーが自身の姿をカメラで映す際に、その背景に任意の動画像を表示できる「バーチャル背景」がある。在宅業務で自室の様子を映したくない時や、社外との打ち合わせで会社が用意したデザインの画像を使用するなどの際に、利用しているユーザーは多いだろう。
ZVC Japan 社長の佐賀文宣氏(左)とISV ビジネスディベロップメントマネージャーの佐野健氏。社員の交流機会として月に1度「Zoom飲み会」を開催し、その時はオリジナルのバーチャル背景にしているという
佐野氏によれば、社内打ち合わせでも社員のほとんどがバーチャル背景を使用しているという。「各人が個性的なバーチャル背景を利用している。オリジナルなバーチャル背景の画像を投稿、共有できるチャットルームもあり、クリスマスなどのイベントの際には、同じバーチャル背景を利用するなど、社員同士のつながりを深める役割も担っている」(佐野氏)
Zoomには、ミーティングやウェビナーの様子を録画する機能もあるが、同社では議事録や参加できなかった社員との情報共有などのために活用しているとのこと。「2倍速再送などもできるので、長い時間の打ち合わせの内容を後で確認する時も効率的なので活用している」(佐賀氏)
また、参加者のデバイスにある別のウィンドウやタブの画面を共有する機能もあるが、佐野氏によれば、iPadが参加者のWi-Fiネットワーク内にあれば、iPadの画面も共有できるといい、iPadに打ち合わせの内容をメモしながら、それをホワイトボードのように参加者同士で共有することもできるという。
「画面の共有」で同じWi-FiネットワークにあるiPadの画面をホワイトボード代わりに利用できる
なおZoomには、利用時間などに制限のある無償アカウントもあるが、佐野氏によれば、無償アカウントを有償アカウントにひも付けて一元的に管理できるとのこと。「無償アカウントを管理できないツールが多いため、そのイメージからZoomの導入が見送られるケースもあるが、実は可能。有償アカウントにひも付けることで、無償アカウントでもチャットを利用したり、一時的にアカウントを切り替えて制限なく利用したりすることもできる」と話す。