コロナ禍でのリモートワークの拡大に伴って急速に普及したビデオ会議システム「Zoom」。これをクラウドサービスとして提供するZoom Video Communications(以下、ZVC)の創業者兼CEO(最高経営責任者)であるEric Yuan(エリック・ユアン)氏が自社イベントで「これから」について語った。その内容が非常に興味深かったので、紹介して考察したい。
ビデオ会議から「ビデオコミュニケーションプラットフォーム」へ
「Zoomはこの1年半余りで、いつでもどこでも使える頼もしいビデオコミュニケーションプラットフォームになってきた」
ZVCのYuan氏は、同社が先頃オンラインで開催した自社イベント「Zoomtopia 2021」の基調講演でこう胸を張った。同社の急成長ぶりはまさしく目を見張るものがある(写真1)。
写真1:「Zoomtopia 2021」の基調講演で話すZoom Video Communications創業者兼CEOのEric Yuan氏
直近の四半期(2021年5〜7月期)決算では、売上高が前年同期比54%増で初めて10億ドルを上回った。純利益は同71%増の3億ドル超。詳しい内容については関連記事をご覧いただくとして、四半期ベースの売上高の過去1年半の推移を見ると、ほぼ10倍になっているのが急成長ぶりを象徴している。
Yuan氏が「ビデオコミュニケーションプラットフォームになってきた」というのは、ビデオ会議を皮切りに、電話やチャットの利用、イベントやコンタクトセンター向け、外部の各種アプリケーションとの連携といったように、サービスの用途を広げつつあるからだ。
これらを共通のプラットフォーム上で利用できるようにすることで、「どこにいても仕事ができ、必要な時に必要な人たちとつながって共通の空間でさまざまな共同作業を行えるようになる」と同氏は説いた。
では、同社の「これから」についてYuan氏はどのような姿を描いているのか。やはり重ねて話したのが「ビデオコミュニケーションプラットフォームの拡充」である。
さらに、「技術の視点から」と断った上で、次のように話した。
「リモートであっても、世界中の人たちが自由に会話できるように、さまざまな言語をリアルタイムに翻訳できる機能を整備したい。さらに会話だけでなく、握手したりハグしたりといった感覚をお互いに伝えられるようにしてみたい。技術を駆使してそうしたことを実現し、将来はZoomプラットフォームがリアルよりも優れたエクスペリエンスを提供できるように、果敢にチャレンジしていきたい」
同氏の「技術者魂」を強く感じた発言である。