松岡功の一言もの申す

IBM CEOが今、「共創」の重要性を強調する思惑とは

松岡功

2022-05-19 10:49

 長らく業績低迷にあえいできたIBMが、再び成長軌道に乗ろうと躍起だ。それを象徴する言葉として、同社の経営トップが年次イベントで「コ・クリエーション」(以下、共創)の重要性を強調した。その背景にはさまざまな思惑がありそうだ。

「Let’s Create」を掲げたブランドキャンペーンを展開

 「これからのビジネスでは『共創』することが成長の決め手になる」

写真1:年次イベント「Think 2022」でスピーチするIBM 会長 兼 CEOのArvind Krishna氏
写真1:年次イベント「Think 2022」でスピーチするIBM 会長 兼 CEOのArvind Krishna氏

 IBM 会長 兼 最高経営責任者(CEO)のArvind Krishna(アービンド・クリシュナ)氏は、同社が5月10〜11日にオンラインで開催した年次イベント「Think 2022」の基調講演でこう強調した(写真1)。

 基調講演では、Krishna氏をはじめIBMの幹部らが、ハイブリッドクラウド、人工知能(AI)、サイバーセキュリティ、量子コンピューティングなどの最新の取り組みについて説明した。その内容については日本IBMの発表資料をご覧いただくとして、本稿ではKrishna氏がモデレーターの質問に答える形で「共創」の重要性について重ねて強調した点に注目したい。

 まず、「変化の激しいビジネス環境において、リーダーシップをうまく発揮していくためのポイントは何か」と問われて、同氏は次のように答えた。

 「3つある。1つ目は、テクノロジーを有効活用することだ。しかもスピーディーに行うことが重要なので、リーダー自らが先頭に立って動くくらいの情熱が必要だ。2つ目は、社内外で共創を促していくことだ。力を合わせてクリエイティブな仕事ができる環境を作るのもリーダーの役割だ。3つ目は、共創していくためにもチームワークを重視することだ」

 この答えは、IBMとしてというのもさることながら、同社にとってこれからの顧客になり得る一般の企業に向けてのメッセージを意識した内容といえるだろう。3つに分けて答えているが、要約すると「テクノロジーを活用してチームワーク良く社内外で共創していけるようにすること」が、リーダーシップにおいても大事だと。この中で、共創がキーワードであることは明白だ。

写真2:2022年初めから「Let’s Create」を掲げたブランドキャンペーンを展開(出典:「Think 2022」基調講演でのプレゼン資料)
写真2:2022年初めから「Let’s Create」を掲げたブランドキャンペーンを展開(出典:「Think 2022」基調講演でのプレゼン資料)

 また、IBMは2022年初めから「Let’s Create」を掲げたブランドキャンペーンを展開しているが、その狙いを問われて同氏は次のように答えた(写真2)。

 「これからのビジネスは、これまでにも増してクリエイト(創造すること)の力が求められるようになる。しかもそれは個々の人や組織にとどまらず、多くの力を合わせて共創していくことが成長の決め手になる。多くの力というのは、社内はさることながら、ビジネスパートナー、さらにはお客さまともコラボレートして結集していくものだ。Let’s Createとはまさしく『一緒に共創しましょう』という思いを込めた言葉だ」

 冒頭で紹介したKrishna氏の発言は、このコメントから抜粋したものである。この内容もIBMの新たなブランドキャンペーンについての説明ながら、一般企業に向けてのメッセージを意識したものといえる。なかなか巧みなメッセージの発信の仕方である。

 

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