三菱地所は、データ管理基盤「Cloud Data Integration」(CDI)を採用した。街づくりと新サービスの創出に向けたデータ連係、分析基盤として活用する。製品を提供するインフォマティカ・ジャパンが6月7日に発表した。
CDIは、クラウド型データ管理サービス「Intelligent Data Management Cloud」(IDMC)の製品の一部。三菱地所では、既存の情報システムを連係させ、データの分析や活用を容易にするとともに、社内業務の生産性向上にも期待を寄せる。オンラインとオフラインを融合させた街づくりを目指す「三菱地所デジタルビジョン」の達成にも寄与するとしている。
従来、同社ではビル単位の収支や総資産利益率(ROA)を確認する際、既存のテンプレートで作成した請求書や支払い明細のデータを基幹システムから集め、Excelで加工した上で紙に出力していた。しかし、CDIの導入後はシステムをデータ基盤につなぐことで、ビジネス情報(BI)ツールにデータを直接展開して作業を自動化することができるようになった。この新しいワークフローは、アナログな工程を省略するだけでなく、迅速かつ正確な事業収支の可視化にもつながっている。
また、個別業務の課題に対して新しいアプローチを試みる際も、データを組み替えることで瞬時にデモンストレーションを行えるようになった。一方、社外に対しては、今回の基盤構築を機に居住者や来街者、就業者といったさまざまな事業データを横断的に活用することで、社会の潜在ニーズを発見し、新サービスの創出に結びつけるための体制を整備できたという。
データ連係、分析基盤の全体像
三菱地所デジタルビジョンは、人と企業がオンラインとオフラインを行き来しながら交流できる新しい暮らし、待ちづくりを目指すもの。同社は事業横断的なデータや好意的に提供された個人データを分析し、暮らしやすさや働きやすさをより実感できるエコシステムの構築と新サービスの創出に注力している。
そうした中、同社では、データ形式やプロトコルが異なる100種類以上のシステムをAPIなどでつなぎ、商業ビルの基幹システムに関するデータや居住者、来街者、就業者向けウェブシステムのデータをデータウェアハウスに中継するための統合ハブと、データ連係・分析基盤の導入を計画し、2021年6月に基盤の整備に着手している。
同社では、CDIについて、SaaSやパブリッククラウドとの親和性が高いマルチクラウド型の基盤である点や、あらかじめ豊富なコネクターが装備されており、新規開発が不要ですぐに活用できる点を評価した。またデータの連係、統合に加えてハブを介した疎結合やAPI開発など、充実した機能がそろっている点、クラウドを介して新機能が随時追加される点などが採用の決め手となった。
さらにインフォマティカでは、従量課金制でソリューションを提供しているため、小規模導入と状況に応じた利用の拡張が可能であった点も採用理由の一つとなっているという。
今後、三菱地所では、これまで蓄積してきた顧客情報をデータレイク経由でデータウェアハウスと連係できる仕組みをCDIで構築する計画だ。それにより、2020年から部分的に運用を開始しているエンドユーザー向けの共通認証ID「Machi Pass」の基盤と、グループ各種事業とのデータ連係が容易になる。また、IDMC製品の一つである「Cloud Data Quality」を活用し、商業テナントなどが持つ顧客のデータやコードを統一するなど、データ品質を改善、維持していく計画だ。