セキュリティチームが、増える一方のIoTデバイスやクラウドコンピューティングにまつわるセキュリティ確保業務とともに、ランサムウェアとの戦いに明け暮れる中、新たな難題が迫りつつある。それはデジタル技術を活用したなりすまし、すなわちディープフェイクからの保護だ。
オフィスでのビデオ会議。しかし通話している相手は、本当に自分が思っている相手なのだろうか?
提供:Getty/Luis Alvarez
ディープフェイク動画とは、人工知能(AI)やディープラーニング(DL)といった技術を用いて作り出された、本物そっくりに見える人やイベントの映像のことだ。
最近起こった事例として、ベルリン市長のケースが挙げられる。この市長はディープフェイク動画にだまされ、ビデオ会議の相手が元ボクシングチャンピオンであり、ウクライナのキーウの現職市長であるVitali Klitschko氏だと思い込んだのだという。
ただベルリン市長は、「Klitschko」と称する人物がロシアのウクライナ侵略についてあまりにもおかしな内容を口にし始めたことに疑念を抱いた。その後、通話が中断されてから、職員がベルリンのウクライナ大使に問い合わせたところ、通話の相手は本物のKlitschko氏ではないと分かったのだという。
なりすましていた相手は明らかに、欧州地域の他の市長たちとも話をしていたという。しかしこれらの各事例も、AIによって生成され、本物の人間がしゃべっているように見えるニセ動画、つまりディープフェイクとの会話のようだ。
これはディープフェイクがより高度かつ、より迅速に作成できるようになってきている表れと言える。これまでに出回ってきているディープフェイク動画はしばしば、疑わしい編集方法や不自然な動きといった、何かが本物ではないという手がかりを残している。
この事例は、誰かが純粋に問題を引き起こそうとして仕組んできたもののようだが、ディープフェイク技術の発展によってサイバー犯罪者が、特に金銭の窃盗目的で悪用するようになるのは想像に難くないだろう。
こういった点で今回のインシデントは、ディープフェイクによってもたらされる新たな脅威の数々が、単に行政機関の首長だけのものではなく、われわれ全員のものだという警告にもなっている。