人工知能(AI)は、多くの産業の仕組みを変えつつある。AIを導入した企業は、活動を自動化し、より効率的、効果的に成果を生み出すことができる。「McKinsey Technology Trends Outlook 2022」と題したレポートでは、AIとそのさまざまな応用例について詳しく分析しているのだが、これを読めば、その影響がIT業界以外にも広く及んでいることが分かる。この記事では、AIが重大な影響を与えるであろう主要産業をいくつか紹介しよう。
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1.農業
AIには農業を最適化できる可能性がある。これは、精密農業が可能になったり、一部の機能を自動化できたりするためだ。精密農業とは、農家の細かいニーズに合わせて作物に与える農薬や肥料を調整する農業のことを指す。AIと機械学習は、データを収集しパターンを特定することで、農家が何をどれだけ行う必要があるかを明らかにしてくれる。McKinseyのエキスパートパートナーであるRoger Roberts氏は、米ZDNetの取材に対して、「データからパターンを発見し、精密農業を可能にすることができると考えてほしい。例えば、畑の適切な場所に適切な量の肥料だけをやるようにすれば、農家のコストを抑えながら、収穫も最適化できる」と述べている。
通常であれば人間が運転する必要がある一部の農業機械も、AIによって自動化することができる。例えば、農場で無人トラクターを利用することが可能になるわけだ。作業の一部を自動化できれば、農家の人が農作業を効率的にこなしながら、もっと重要な作業に力を振り向けることができるようになる。ただしAIは、農家を支えてくれるツールであって、農家の代わりにはならない。
「AIが代わりにできる作業はあっても、職業としての農家に取って代わることはできない。そしてAIにできる作業は、往々にして農家を苦難が多い職業にしていた要因でもある」とRoberts氏は言う。「AIと機械学習は、人間を一部の作業から解放し、もっと重要な仕事に力を注げるようにしてくれる」
2.教育
近年の教育分野は、すでに劇的な変革が進んでいる。これは、コロナ禍とリモート教育への移行によって、学生や教育者が新たな技術を取り込まざるを得なかったからだ。とはいえ、AIによって学生の学び方や学生が受ける教育が改善される余地は残っている。学校のカリキュラムは一般的に言ってかなり硬直的で、学生個人の学びのニーズが考慮されていない。しかしAIを導入すれば、学生個人の学びのニーズや進捗状況に応じて、それに合った学習計画を立てられるようになるかもしれない。
Roberts氏は、「個々の学生に目をやれば、医療の世界で人口集団全体だけを見るのでなく患者個人の既往歴を調べることによって個人に合わせた医療が可能になったのと同じように、その学生に合わせた学習のペースと科目の選び方を実現することができるだろう」と述べている。