PwCコンサルティングは11月9日、「2022年DX意識調査-ITモダナイゼーション編-」を主題としたメディアセミナーを開催した。
同社 上席執行役員 パートナー ラウドトランスフォーメーションリーダー 中山裕之氏は、スイス国際経営開発研究所(IMD)の「世界デジタル競争力ランキング2022」の結果を引用しながら、調査背景を説明した。
「総合順位が昨年2021年より1ランクダウンして、調査対象国63カ国中29位と過去最低。アジアでもシンガポールや香港、中国、台湾に遅れをとった。サブ因子のビジネス俊敏性も昨年の53位から9ポイントダウンして62位。調査対象国が63カ国のため、下から2番目という結果に。日本のITは俊敏性に寄与しているのか、との課題認識から調査を昨年から実施した」
ITモダナイゼーションが進まない日本
今回の調査は2021年5月の第2弾にあたり、売り上げ500億円以上のITモダナイゼーション(近代化)に関与する企業や組織の課長以上を対象に2022年8月に実施した。有効回答数は524人。
特徴的なのは、アジャイル開発手法と適用状況、パブリッククラウドの活用状況、クラウドネイティブ技術のアプリケーション開発利用の3つに焦点を当て、3項目を満たした組織を「先進」、1つかけた場合は「準先進」、それ以外を「その他」に分類する「ITモダナイゼーション成熟度」と定義している点。
その結果、先進は7%、準先進は29%、その他は64%との結果に。売上規模別に見ると「売上規模が上がるほど比率は高まるが、準先進まで考慮すると、売上規模と先進・準先進の相関関係は見られなかった。重要なのは企業の姿勢」だと中山氏は強調する。
PwCコンサルティング 上席執行役員 パートナー ラウドトランスフォーメーションリーダー 中山裕之氏
それでも先進に分類された企業は、37%が最高経営責任者(CEO)自らデジタルトランスフォーメーション(DX)体制を推進し、可視化したデータを意思決定に用いる割合は84%。利用者視点の課題解決や問題解決プロセスを全社レベルで展開する企業は71%にものぼった。
だが、ITモダナイゼーション成熟度の成長は停滞し、「先進は7%で変化なし。準先進も25%から29%で微増。日本でITモダナイゼーションが進んでいないことが見て取れる」(中山氏)
サブ要素に分解しても、アジャイル開発手法展開状況は58%から13ポイントダウンの45%、パブリッククラウド活用状況は72%から11ポイントアップの83%、クラウドネイティブ技術の活用状況は53%と変わらず。パブリッククラウド活用で享受した効果として、「市場変化への対応(先進71%)」「イノベーションの加速(68%)」が上位を占めている。
PwCコンサルティングは日本企業におけるITモダナイゼーションの傾向として、以下の5つを指摘した。
- ITモダナイゼーションの成熟度に応じて俊敏性が高まる業務アプリケーション
- 育成プログラムの全社展開と、社員が現場で経験を積むことで効果が出ているデジタル人材育成
- イノベーションの加速、変化への対応スピードなど、企業の俊敏性向上を目的として活用しているパブリッククラウド
- 抜本的な刷新に苦慮しており、技術的負債から抜け出せない基幹システム
- 過去のトラウマから、本格運用に踏み切れないアジャイル開発
デジタル人材育成を組織全体もしくは事業部門単位で展開する先進的組織は98%(準先進は81%、その他は32%)。その効果を「期待以上」と回答した先進的組織は61%(準先進は8%、その他は2%)。
PwCコンサルティング シニアマネージャー 岡田裕氏
同社 シニアマネージャー 岡田裕氏は「少し深掘りしてみると(先進は)IT内製化の担当範囲が広く、企画、開発、運用すべてを自社社員で実施する割合が66%にのぼった。(調査結果は)人材育成プログラムの重要性を示しており、得た知識をビジネスの現場を経由すると体得し、組織にスキルが定着していくのでは」と推察した。