5つのトレンドでデータ管理とアナリティクスの2023年を展望する

小川直樹 (Denodo Technologies)

2022-12-30 07:00

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染の拡大によりデジタルビジネスに移行する動きが加速しましたが、実店舗での販売を主体とする企業(ブリック&モルタル、B&M)の多くが、デジタルビジネスの採用を今後も継続するという見方が一般的です。B&Mビジネスが本格的に復活しても、その商取引の相当量がデジタルで行われることになります。そうした中、デジタル技術を活用したデータ主導型のビジネスイノベーションを果たせるかどうかが、リーダー企業と他社を差別化する要因になると考えられます。

 デジタル戦略においてデータは中核であり、適切に管理することがビジネスを成功に導く鍵となります。そのため、データ管理基盤やアーキテクチャーの分野で多くのイノベーションが生じているのです。ここでは、データとアナリティクスに関連して、2023年に最も影響を与えると思われるトレンドのトップ5を紹介します。

トレンド1:景気後退が迫る中、企業によるインフラコストの最適化が進む

 景気後退に陥るかどうかを問わず、企業はITインフラを縮小することでコストを削減している。これは、昔から多くの最高経営責任者(CEO)が採用してきた分かりやすい手段の一つです。クラウドの利用によりコンピュートやストレージのコストは削減され続けていますが、データとアナリティクスのインフラに投資をする場合、組織にとっては依然として膨大な支出となる可能性があります。

 ストレージ、コンピュート、アプリケーションの選択肢が多いため、企業はデータとアナリティクスの環境を最新にするために、既存インフラを刷新する戦略を取ることもあります。そのアプローチは、コストがかかるだけでなく、ITの運用が妨げられることも少なくありません。

 2023年は、データがシングルクラウドに存在するか、マルチクラウドに存在するか、オンプレミスを含むハイブリッド環境に存在するかを問わず、ITインフラを更新する際に、中断しない最新の方法を重視していく企業が増えると思われます。

トレンド2:マルチクラウドが本格化する中、クラウドにおけるFinOpsが必要になる

 多くの企業では、戦略的なデータ資産は複数のクラウドや地理的な場所に分散されています。それは、各事業単位や拠点にそれぞれ優先するクラウドサービスプロバイダー(CSP)が存在したり、そうした資産が合併や買収によって異なるクラウドプロバイダー間に置かれていたりするためです。

 クラウドに移行するデータが増え続け、地域によっては特定のクラウドプロバイダーとその他のプロバイダーの競争が目立つようになる中、多国籍企業ではマルチクラウドアーキテクチャーの採用が加速しています。現在、こうした異なるCSP間でデータやサービスを簡単に管理して統合する方法はありません。この問題に対処しなければ、データのサイロ化やデータ管理への断片的なアプローチが必ず生じて、データアクセスやデータガバナンスが困難になります。

 また、一般的な認識に反して、クラウドのコストもますますかさむようになっています。膨大なデータの量とそれに関連したエグレス料金(データを外部に持ち出す際に発生する料金)は、その原因のほんの一部です。クラウドへの投資による経済的メリットや事業的メリットを目的通りに得られている組織は多くありません。

 そのため、FinOpsを活用してクラウドのコストと利用を管理するフレームワークを設け、価値に対するコストを明確にして、最新のハイブリッド/マルチクラウド環境全体で最適にデータを管理する方法を判断しようとしています。2023年は、企業がハイブリッド/マルチクラウドにかける費用の管理を改善する重要な取り組みとして、FinOpsが勢いを増すと予想されます。

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