人工知能(AI)が、サーフィンをするキリンの画像や、気落ちしたラーメンどんぶりの韻文詩をあっと言う間に生成して人々の創造力を掻き立てる一方で、AI技術はあらゆるところに使われ始めており、ますます賢くなっているように見える。
提供:James Martin/CNET
そのことに魅了される人もいれば、恐ろしいと思う人も、またその両方を少しずつ感じている人もいるだろう。AIが破壊的な技術であることは確かだ。そのことは、この数カ月の間に有力メディアに掲載された、「As AI Advances, Will Human Workers Disappear?(AIの進化によって人間の労働者は消えるのか)」「Why A Conversation With Bing's Chatbot Left Me Deeply Unsettled(Bingのチャットボットとの会話が私を動揺させた理由)」といった記事のタイトルを見ても分かるだろう。
それを考えれば、テキサス州オースティンで開催されたSXSWカンファレンスでAIが話題になったことに驚きはない。SXSWは、ビジネス、テクノロジー、エンターテインメントの各分野の思想的リーダーや著名な経営者、アーティストが集まり、最先端の話題について議論を交わすカンファレンスだ。SXSWの参加者はまだコロナ禍以前の水準には戻っておらず、各会議場に集まる参加者が定員の半分に満たないこともあったが、それでもメタバース経済からアニメの音楽に至るまで、あらゆるテーマでパネルディスカッションや講演が行われた。
SXSWに登壇したAI業界関係者の間には、AIがあまりにも急速に普及していることに対する不安が見られた。さらに、AIが日常的に触れられる技術に組み込まれているにもかかわらず、一般社会はまだ、AIの重要性の急速な増大や、AIに何ができるかを把握できていないとの認識があった。一般の人々は、SFによく登場するようなテーマにとらわれたり、AIに対して実際にはありもしない人格を投影してしまいがちだ。パネルディスカッションの議論の流れは明らかで、それは分別を持ってAIに対峙すべきだというものだった。
ニューヨークに本社を構える広告会社Wunderman ThompsonでAIを扱っているグローバルクリエイティブデータ責任者Jason Carmel氏は、「AIには自意識があるという報道をする前に、友人に尋ねてみるべきだ」と述べた。Carmel氏は、米国時間3月14日に行ったプレゼンテーションで、AIをセンセーショナルに報道することは(前述の記事の見出しがその代表例だ)誤解を生み、最終的には恐怖と、信頼の喪失に繋がると主張した。
AIに関するこの新たな心配の波は、11月にOpenAIの「ChatGPT」がリリースされたことがきっかけで始まった。ChatGPTは強力なAIエンジンをベースに構築されたチャットボットで、私たちがインターネットで情報を得る方法を大きく変えると期待されている。ChatGPTはリリース直後から絶大な人気を誇っており、1月にはアクティブユーザーが1億人を超え、史上最も成長が早いウェブプラットフォームとなった。