「ChatGPT」や「DALL-E」「Midjourney」といった生成型人工知能(AI)システムは、さまざまな業界に革命をもたらそうとしている。神経科学者であり起業家でもあるPascal Kaufmann氏はこうした新たなAIについて、テキストや画像の生成能力があまりにも高いが故に過大評価されがちになっていると述べた。
StarmindとMindfireグループの創設者であるKaufmann氏によれば、真の知性は、今までにないまったく新たな問題を解決する能力として緩やかに定義されているという。同氏は、自然言語処理のようなタスクに目を向けた場合、AIの能力を過大評価してしまいがちだが、「GPT-3」をはじめとする大規模言語モデル(LLM)は、真の知性を獲得しているわけではなく模倣しているに過ぎないと主張した。特に、かつて遭遇したことのない問題に取り組む能力に欠けているという。
具体的に述べると、こうしたシステムが詩やコードを生成できるのは、訓練時に既存のコンテンツを用いているためだ。しかし、それだけで冗談を理解したり、共感するといった抽象的なタスクを遂行できるようにはならない。
Kaufmann氏は「一部の人たちは『AI』という言葉を『Amazing Innovation』(驚くべきイノベーション)という言葉の略語だと考えている節がある。そのため、驚くべきものはすべて『AI』と呼んでいる」と述べ、「しかし、知性というものは実際のところ、科学的に定義し、定量化できる。知性は今まで遭遇したことのない問題や、未知の問題に対処する能力として定量化できるのだ。あなたは今までに見たこともないような新たな問題を解決できるだろうか。ChatGPTのようなLLMは過去に遭遇したことのない問題には対処できない。従って(その知性は)ゼロと言える」と続けた。
このような制約があるとはいえ、Kaufmann氏は新たな生成型モデルはAIの能力を大きく向上させ、さまざまな業界に革命をもたらす可能性があることを認めた。そして、クリエイティブで視覚的な成果物を効率的に制作し、コストと制作時間を劇的に削減できるという点も強調した。また、このモデルが膨大な情報の蓄積にアクセスすることで、ユニークな問題に対して人間よりも創造的な解決策を生成できる可能性も示唆した。
さらに、イラストや映画制作といった業界におけるAIの価値として、本物の人間を起用するよりもバーチャルな人間を生成し、制御する方がコスト面でより有利になるという点についても指摘した。同氏は、AI技術によってクリエイティブな業界の雇用が奪われる可能性もあると言う。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。