日本HPは4月18日、デスクトップワークステーションや、ハイブリッドワークを支援するモバイルワークステーションの新製品群を発表した。同社のワークステーションの主な顧客である製造/建設業の企業では、コロナ禍の影響もあり、デスクトップ型からモバイル型への移行が見られるという。
同日開催の説明会に登壇したパーソナルシステムズ事業統括 クライアントビジネス本部 バリュービジネス部 部長の大橋秀樹氏は「建設業では、設計者のフリーアドレス化や建設現場への端末の持ち込みを望む声が多い。製造業では、まだデスクトップワークステーションの比率が高いものの、データセンターに高性能のマシンを集約させ、利用者がシンクライアント端末などからリモートアクセスする動きが進んでいる」と説明した。
同氏は、ハイブリッドワーク時代のワークステーションに求められることとして、(1)モバイルワークステーションの選択肢拡充、(2)データセンターでの集中管理、(3)データセンターでの設置を前提とした機能と性能――を挙げる。
(1)では、多くの企業がモバイルワークステーションへ移行する中、モバイルならではのさまざまなニーズに対応する。(2)では、これまでITエンジニアを要する大手企業が率先してリモート環境を構築していたが、今後は中堅中小企業でもリモート環境の構築や端末の管理を行えるソリューションを提供する。(3)では、従来オフィスフロアでは不可能だった高性能なワークステーションの設置が期待される。例えば、オフィスフロアでは1000ワット程度が上限だったが、データセンターでは2000ワットほど出力できるという。
日本HPは今回、デスクトップワークステーションとして「HP Z4 G5」「HP Z6 G5」、ハイエンドの「HP Z8 G5」「HP Z8 Fury G5」などを発表した。これまでは第4世代(G4)だったが、今回は第5世代(G5)に移行。Z4とZ6は、G4では2基まで搭載可能だったCPUが1基のみとなるが、1基のCPUでも2基分のパフォーマンスを発揮できるという。「Z8 G4」の純粋な後継製品のZ8はCPUが2基、Z8 FuryはZ4/Z6同様に1基である。
Z8 Fury G5の内部。筐体(きょうたい)に隙間があり、その分メモリースロットを追加できる。「NVIDIA RTX 6000 Ada」世代クラスのハイエンドGPUも4枚まで搭載可能。1基で出力が高いCPUや電力を消費するGPUを搭載するため、計2250ワットのデュアルパワーサプライを動作可能
Z8やZ8 Furyは、消費電力が高いコンポーネントを複数利用している分、排熱にも注力している。例えば、クーリングソリューション「3Dベイパーチャンバーアーキテクチャー」を活用した「HPプレミアムクーラー」によって冷却効率を上げる。また、ゾーンごとに分けられた20個以上のセンサー温度をリアルタイムに監視・調整。作業量に応じてファンの回転数を調整し、静粛性の維持にもつなげる。
税込希望販売価格は、Z4が58万1900円から(発売時期4月下旬)、Z6が93万5000円から(5月中旬)、Z8が80万3000円から(5月上旬)、Z8 Furyが85万2500円から(5月下旬)。
同社はリモートアクセスの増加を受け、デスクトップワークステーションを一元管理する「HP Anyware Remote System Controller」も提供する。1つの画面で管理・設定できるため、IT管理者の工数削減が期待される。外付けと内蔵の2タイプがあり、発売時期は7月頃を予定している。
一方、モバイルワークステーションでは、「HP ZBook Firefly G10」「HP ZBook Power G10」「HP ZBook Studio G10」「HP ZBook Fury G10」を発売する。FireflyとPowerは持ち運びに適しており、前者は建築業の営業担当者が顧客に図面を見せる時、後者は機械製図に特化したコンピューター支援設計(CAD)システムを利用する事業者が自宅や出張先で仕事をする時に役立つとしている。
StudioとFuryは、1台で全ての業務を行いたい顧客をメインターゲットとしている。Studioはクリエーター向けで薄型軽量に注力し、Furyはモバイルでありながら性能を追究しているという。
「HP ZBook G10」シリーズは、第13世代「Intel Core HX」シリーズプロセッサーを採用する。Furyは最大24コアで、モバイルであっても解析業務が可能だという。ハイエンド製品には「NVIDIA RTX」GPUを搭載している。
StudioとFuryには、冷却システム「HP Vaporforce Thermals」を搭載。CPU/GPUの発熱量が増大しても3Dベイパーチャンバーとデュアルブレードファンにより、システムの処理性能を低下させることなく安定動作を可能にするという。
Fireflyは14インチが32万5600円から、16インチが33万8800円から。発売時期はどちらも5月中旬。Powerが40万4800円から(6月中旬)、Studioが59万7300円から(7月中旬)、Furyが59万7300円から(6月中旬)。
Furyの外観