キンドリルジャパンは、現在北関東で運用しているデータセンターについて国内の新たな施設に変更する方針を明らかにした。既存施設の老朽化と現在の顧客ニーズに対応するためだと説明している。
同社によると、データセンターの方針については、災害や震災が続いた影響を踏まえて2017年からIBMとして拠点などの売却、リースバックや、閉鎖あるいは継続などを検討し、IBMから分社独立した2021年からはキンドリルが引き継いで対応を進めていた。
北関東のデータセンターは、1990年代から2000年代にかけて建設された複数の建屋で構成されており、いずれも建設から20~30年近くが経過して、老朽化が課題になっていたとのこと。代表取締役の上坂貴志氏は、ブログで「現在の日本のITインフラを代表するものであり、サービスを提供している顧客ニーズに対応したものだが、高度なクラウドコンピューティングやAIを必要とする進化したニーズに対応するには難しい点もあると思われる」と述べた。
データセンターを新施設に変更する理由について同社は、(1)事業継続性の観点から災害などに強いサービス提供拠点を確保する必要性が高まっていること、(2)クラウドなど最新の顧客ニーズに対応するために低遅延・大容量の通信環境を確保する必要があること、(3)地球温暖化対策などを推進すること――の3点を挙げている。
(1)については、現在よりも強固な地盤を有するデータセンター施設に切り替え、東日本と西日本の冗長構成によるサービスの安定性向上を図るという。(2)では、顧客のマルチクラウドやハイブリッドクラウド需要の高まりを受けてネットワークの遅延をさらに低減し、より大容量のデータ転送に対応する必要性があることから、新拠点をインターネットエクスチェンジの近隣に確保する。(3)では、同社が2030年までの再生可能エネルギーの100%使用、2040年までの温室効果ガス排出量の実質ゼロを目標としていることから、電力消費の少ない省エネルギー設計のデータセンター設備に切り替える。
新拠点への具体的な変更時期については明らかにしていないが、新拠点は同社所有ではなくデータセンター事業者所有の施設を利用する形とし、「今まで以上にニーズの変化へ迅速かつ柔軟に対応できるようにしたい」(同社)と説明する。
現在の北関東のデータセンターは、金融機関を含むさまざまな業種の企業が利用している。拠点の変更が利用顧客にも大きく影響することから、同社は日本IBMとも連携してデータセンター移転専属チームを組成。データセンター変更のノウハウなども取り入れるなど業務と基盤の両面から全体を管理し、利用顧客への説明を順次進めているとした。
今回の方針を巡っては、一部報道機関が7月27日に独自ニュースとして取り上げ、その中で2020年と2022年に発生した電源障害について、北関東のデータセンターの老朽化とは直接的な因果関係がないとしながらも、その可能性を指摘していた。
この点についてキンドリルジャパンは、電源障害の原因が「電源構成面に起因する問題であり、現在は構成変更も完了し、安定稼働している」と説明。今回のデータセンター変更の方針に電源障害も関係しているのではないかとの見方を否定している。