日本の安全なデータ連携AIプラットフォームを目指す--NICTやIT9社が協働

ZDNET Japan Staff

2023-08-04 16:00

 情報通信研究機構(NICT)と国内IT9社は8月4日、総務省委託研究開発の「安全なデータ連携による最適化AI推進コンソーシアム」の設立を発表した。分散型機械学習技術の活用とその社会実装を想定した実証に取り組む。

 この取り組みは、総務省の2023年度情報通信技術の研究開発課題「安全なデータ連携による最適化AI技術の研究開発」に基づき、NICTとKDDI、KDDI総合研究所、グリーンブルー、NEC、ピコラボ、さくらインターネット、凸版印刷が委託先として選定されたことによるもの。コンソーシアムは各組織にプラナスソリューションズとギリアも加わり、10者で「プライバシーデータや機密データなどを含む実空間に存在するデータを分野の垣根を越えてAI学習に活用することを可能とし、分野横断的な社会課題の解決や産業競争力の向上に貢献する」と説明している。

 コンソーシアムでは、「マルチモーダルAI技術の開発・高度化」「エッジAI技術の開発・高度化」「連合学習技術の開発・実用化」の3つをテーマに以下の実証に取り組む(カッコ内は担当組織)。

マルチモーダルAI技術の開発、高度化

 多様なデータを組み合わせ、複雑な予測を可能とする大規模マルチモーダル深層学習モデルの構築技術および実空間から収集するデータの差異を吸収可能なロバスト(堅固)なマルチモーダルAI技術の研究開発を行う。

  1. 多様、不均衡、少量データに対するロバストな深層学習技術(KDDI総合研究所):収集された場所や期間などによってデータの量や粒度に不均衡が発生した場合でも性能を低下させることなく予測を可能とするマルチモーダル深層学習技術を開発
  2. 異分野データ横断的な予測を可能にする深層学習技術(NICT):異種、異分野センシングデータ間の相関性をマルチレベルに発見、学習し、横断的な予測を可能にするマルチモーダル深層学習技術を開発
  3. 参加型地域安全サービスにおける検証技術(KDDI):地域内のさまざまな場所を横断的に走行するオンデマンドモビリティーなどの車両から取得したデータと外部データを掛け合わせ、地域内の交通リスクを分析、可視化する実証システムを開発し、地域に根付いたモビリティーの新たな価値の創出と地域住民の行動変容を促すフィールド実証を実施。また、基盤モデルの作成、評価、検証に必要なデータの活用基盤を整備

エッジAI技術の開発、高度化

 マルチモーダル深層学習モデルを対象にエッジ環境の限られた計算資源の規模に応じて効率的に学習を行う技術を研究開発する。

  1. エッジの多様性を考慮した高効率な連合型エッジAI技術(NICT):エッジの収集データや計算能力などに応じてマルチモーダル深層学習モデルを分割、転送、集約する分散機械学習や大規模モデルの軽量化を行う連合型エッジAI技術を開発。また、仮想サーバーによるエッジAIのシミュレーション実験システムを構築
  2. リスクベネフィット適応ナビゲーションにおける検証技術(グリーンブルー):車載用や歩行者用のスマートセンサーなどのデータで基盤モデルを連合学習し、運転リスク回避の行動推薦を行うスマート運転支援と、地区拠点ごとの環境ホットスポット予測の実証システムを開発

連合学習技術の開発、実用化

 マルチモーダル深層学習モデルを対象に、多数のエッジ環境間におけるデータの偏りを前提とした⾼精度な連合学習技術を研究開発する。

  1. 安全に個別環境適応が可能な連合学習技術(NEC):データ分布や性能の異なるクライアント間で高精度かつセキュアな連合学習を行うパーソナライズド連合学習技術と、データ項目に差異のあるクライアント間で連合学習を可能にする転移連合学習技術を開発。さらに連合学習における安全性を秘密計算技術などで担保するとともに、連合学習の運用や安全性に関する標準化活動などを通じ連合学習の安全性に関するコンセンサス形成を目指す
  2. 連合学習フレームワーク技術(ピコラボ):AIモデルの管理や交換、機械学習アルゴリズムのモジュール化など大規模分散連合学習を実行するために必要な機能を共通化して提供する連合学習フレームワークを開発
  3. エッジ、クラウド連携による基盤モデル最適化技術(さくらインターネット、プラナスソリューションズ、ギリア):研究成果を集約したデータ連携AIプラットフォームの参照実装を開発し、システム基盤構築と機械学習モデル構築を最適化する技術を検討
  4. スマートシティー市民サービスにおける検証技術(凸版印刷):市民向けアプリケーションを対象に各種データとの連携、リスク情報の個別通知、市民向けアプリケーションによる情報収集を行う技術を開発し、市民向けアプリケーションを通じた安心、安全な移動の支援への有効性を評価

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