富士通は10月26日、2023年度上期(2023年4月~9月)の連結業績を発表した。国内サービスソリューション事業の成長で力強さを見せつける一方、海外サービスソリューション事業や、カーブアウトが遅れているデバイスソリューション事業が低迷するなど、まだら模様の決算となった。
同社によると、上期の売上収益は前年同期比0.4%減の1兆7118億円と減益だったが、PFU売却などの事業再編の影響を除けば、同2.7%増の実質的な増収だと強調する。営業利益は同55.6%減の447億円だが、調整後営業利益が前年同期の240億円の赤字から、今期は507億円の黒字に転換していることを示した。
富士通 取締役執行役員SEVP/CFOの磯部武司氏
決算会見で取締役執行役員SEVP CFO(最高財務責任者)の磯部武司氏は、「デバイスソリューションの低調ぶりは期初から予想していたが、顧客の在庫調整が遅れており、計画に対して未達だった。海外サービスソリューション事業は、前年同期の大型商談の反動が影響し、欧州を中心に、採算面で厳しい状況が続いている」と説明した。
デバイスソリューションは、売上収益が同31.3%減の1426億円、調整後営業利益が同81.7%減の93億円と大きく減少した。サービスソリューションのうち、「リージョンズ」(海外)の調整後営業利益は前年同期のマイナス33億円からマイナス62億円に赤字幅が拡大した。
その一方で、サービスソリューション事業は国内を中心とした旺盛な需要に支えられ、好調な業績となった。サービスソリューションの売上収益は、同8.7%増の9841億円。さらに、再編の影響を除けば13.6%増の高い伸びになる。調整後営業利益は同233.8%増の634億円と3倍以上に伸びた。調整後営業利益率は前年同期の2.1%から6.4%に上昇し、第2四半期だけなら8.2%に高まっている。
磯部氏は、「『Fujitsu Uvance』の開発投資を拡大しながら、利益が前年同期の3倍超という大幅な成長を遂げたことに強い手応えがある。開発標準化の進展により採算性が改善している点も大きい。不採算事業は減少しており、数十億円の抑制効果が出ている。オフショア開発による開発の標準化、自動化、内製化を進めている『JGG』(ジャパン・グローバルゲートウェイ)の活用率も34%に高まり、採算性の着実な向上に貢献している」と話す。
会見で磯部氏は、国内サービスソリューション事業のグロスマージン率が35%前後であることに言及した。サービスソリューション事業における「リージョン(Japan)セグメント」では、上期に前年同期比600億円の増収となったが、これにより200億円規模の増益効果があったという。つまり、国内におけるサービスソリューション事業の拡大は、富士通全体の収益性向上にも大きく貢献することになるというわけだ。
今回の決算内容で、国内サービスソリューション事業の力強さをより鮮明に映し出したのが、受注状況の好調ぶりである。
発表によると、国内サービスソリューション全体の受注は、前年同期比18%増の高水準を維持した。分野別では、「エンタープライズ(産業、流通、小売)」が11%増、「ファイナンスビジネス(金融・保険)」が23%増、「パブリック&ヘルスケア(官公庁、自治体、医療)」が27%増、「ミッションクリティカル(ミッションクリティカル、ナショナルセキュリティなど)」が12%増となり、全ての業種で2桁伸長を遂げている。
より詳しく業種別動向を見ると、エンタープライズは、モダナイゼーション案件を中心に製造およびモビリティーがけん引しており、第2四半期でさらに高い伸びを見せているという。また、ファイナンスビジネスでは、メガバンクや保険などの基幹システムの更新や、モダナイゼーション案件を獲得したことが大きい。パブリック&ヘルスケアでは、官公庁におけるシステム更新案件を複数獲得したことや、病院の電子カルテや医療情報システムへの投資が回復基調にあることが追い風になっている。ミッションクリティカルでは、ナショナルセキュリティのSI(システムインテグレーション)商談が貢献しているという。
磯部氏は、「DXやモダナイゼーション商談を中心に、高水準で受注残高が積み上がっている。受注の推移や注残状況を見ると、2023年度下期も好調な上期と同規模の増益を達成できると強く確信している」とし、「この勢いを維持し、計画を上回る業績をさらに狙っていきたい」と意気込む。サービスソリューション事業の上期の調整後営業利益の増益額は444億円だった。下期は475億円の増益を計画している。