米Dropboxの日本法人Dropbox Japanは12月12日、集中力の途切れによる損失に関する調査「In search of lost focus」の結果を発表した。
同調査は、英Economist Group傘下の調査機関Economist Impactに依頼し、北米、欧州、日本を含むアジア、豪州など世界10カ国のナレッジワーカー1000人以上を対象に2023年に実施。集中が途切れることが原因で引き起こる経済損失をモデル化した。同調査において、ナレッジワーカーとは、肉体労働よりもデジタルツール使った仕事を主に行う専門家、研究者、教育者、アナリスト、ITスタッフなどを指す。
集中力低下対策を実施することで、調査対象国10カ国合計で2兆5200億ドル(約370兆円。1ドル=146円換算)相当の商機が創出されるという。日本単体では、1760億ドル(約25.8兆円)で、生産性を高めることで日本のナレッジワーカーの経済産出量が34%上昇することを示す。
この比率は、米国が41%、ドイツが43%、英国が38%とほぼ同等であることから、どの国でも集中力の途切れによって大きな損失を被っていることが分かると同社でアジア太平洋・日本地域総括ソリューション本部長を務める岡崎隆之氏は同調査結果の記者説明会で述べる。
岡崎隆之氏
調査対象者の42%は、生産的な作業を1時間以上連続で行うことができないと回答。日本のナレッジワーカーは、集中力の途切れによる作業の中断により、1人当たり年間約511時間を損失しているという。
集中力の途切れが生じる原因は、米国を例に見た場合、コロナ禍初期では、在宅勤務に慣れていないこともあり、テレビをちょっと見てしまったり、家事をしなければいけなかったりといったことや、同僚と気軽に話ができない、インターネットの回線が不安定といったことが挙げられていた。それに対してコロナ禍後では、メールやチャットメッセージといったリモートで働くためのツールに対応することも原因として挙げられるようになっているという。
管理職の生産性損失を見た場合、一般社員の年間553時間よりも130時間多い683時間だった。管理職は、労務や業績の管理、他部署とのやりとりなど業務が広範囲にわたる分、集中力の途切れがより細かく発生すると岡崎氏は語る。
集中の途切れにより損失した年間の時間を原因別に見ると、仕事に関するチャットメッセージが153時間で、仕事に関するミーティングが79時間だった。一方、中断からの回復に要する時間は123時間だった。日本のナレッジワーカーの場合、一旦途切れた集中力を取り戻すために年間115時間費やしているという。
集中力の途切れを解決するためにAIに期待する役割としては、「ルーチンワークの自動化」(41%)がトップで、「書類やレポートの要約」(30%)や「情報の検索や整理」(28%)が続いた。「自分の仕事を全てAIに任せてしまうのではなく、仕事をよりやりやすくするためにAIを使いたいというが多いということが分かった」(岡崎氏)
AIを活用したツール、柔軟な業務体制、非同期コミュニケーションを組み合わせることで、より効率的な働き方ができることが最新の研究で示唆されているという。今回の調査結果でも、AIと自動化ツールは、自分の仕事を脅かすものではなく、よりスマートで、より効率的に働くことを支援してくれるという意見が優勢だった。
AIや自動化を活用していると答えた人のうち86%が、そのようなツールによって自身の職の安定に関して安心感が増した、または影響がないと回答。世代別にこの回答の傾向を見た場合も、Z世代からベビーブーム世代まで、どの世代でもおおむね一貫していたという。