本連載の第3回では、日本企業が統合基幹業務システム(ERP)を導入する際の3つのボトルネックの解消可能性について、日本企業を成長企業と成熟企業という2つに分けることで掘り下げてお伝えしました。最終回となる今回は、成長企業と成熟企業がそれぞれに、直近トレンドとなりつつあるコンポーザブルERPをどのように活用していくべきかについてお伝えしていきたいと思います(「コンポーザブルERP」については、第1回もご覧ください)。
成長企業におけるコンポーザブルERP活用法
新興の成長企業においては、第3回で記載した通り、ERP導入のための3つのボトルネック(締め請求、終身雇用、高機能なレガシーシステム)の影響を受けないケースも多いため、理想に近いERPの導入、いわゆるFit to Standardの実現が可能です。
とはいえ、ここで統合型ERPを導入してしまうと、第1回で記載した通り、将来のさまざまな変化への対応が難しくなってしまいます。
そのため、このような成長企業には、コンポーザブルERPの活用が適しています。
このタイプの企業は、毎年継続的に成長を続けており、そのため変化も激しく、人員や予算についても大きな余力はない企業が多いでしょう。
このような状況において、コンポーザブルERPであれば、必要なシステムを必要なタイミングで段階的に導入し拡張していくことが可能です。
例えば、上場を目指すタイミングでは、内部統制に対応した会計システムを導入し、上場以降、グループ会社増を契機に連結決算システムを導入、さらなる人材強化に向けてタレントマネジメントシステムを導入といった形で、自社の成長と規模拡大に合わせて、必要なシステムを順々に導入することができます。
変化の激しい成長企業においては、システム導入に長い時間をかけてしまうと、システムが完成したころには自社の状況が変わってしまっていて、せっかく構築したシステムがフィットしないといった課題が発生する可能性があります。そのため、短期間で導入可能なSaaSを順々に適用していくことが重要です。
一方で、段階的にシステムを導入していった結果、それぞれのシステムが連携せず関連データの二重入力が強いられるような構成になってしまっては意味がないので、互いに連携性を持つSaaSをうまく組み合わせて構築していくのが望ましいでしょう。
このように、成長企業では、コンポーザブルERPを理想的に活用していくことが可能です。
成熟企業におけるコンポーザブルERP活用法
成熟企業においては、これまでの歴史の中でさまざまな機能改修を積み重ね、複雑化したレガシーシステムが稼働しているケースがほとんどだと思います。しかし、ビジネスや法改正などで毎年起こるさまざまな変化に、レガシーシステムが対応しきれないことが多くなってきているのではないでしょうか。
このようなケースにおいて、思い切って統合型ERPを導入しても、3つのボトルネック(締め請求、終身雇用、高機能なレガシーシステムの存在)の影響で、結局膨大なカスタマイズが必要になってしまいます。