神戸発のAI新製品が生まれる可能性を感じて--マイクロソフトAI施設の取材記

三浦優子

2024-01-22 06:30

 来訪者58社・224人、利用申し込み19社・24件――これは、2023年10月11日に日本マイクロソフトが神戸市で開設した「Microsoft AI Co-Innovation Lab Kobe」のオープンから2カ月の利用状況だ。いま話題のAIの専門施設として世界で6番目となるだけにもっと多くの来場者があるのかと考えていたが、所長の平井健裕氏は「決して少ない数ではない。順調な滑り出しと考えている」と話す。平井氏の言葉と現地取材から同施設の特性と目指す方向が見えてきた。レポートする。

Microsoft AI Co-Innovation Lab Kobeの入口
Microsoft AI Co-Innovation Lab Kobeの入口

AI開発に悩む企業を1対1でサポート

 Microsoft AI Co-Innovation Labは、神戸商工貿易センターの上層階、とても景色の良い場所にある。開設に協力した川崎重工業をはじめ、製造業の多い場所に設置された。所長の平井氏は、「最大の特徴はAIを使った新サービスを創出する際、1対1でお客さまとキャッチボールをしながらサポートしていくことができること」と話す。

日本マイクロソフト Microsoft AI Co-Innovation Lab Kobe所長の平井健裕氏
日本マイクロソフト Microsoft AI Co-Innovation Lab Kobe所長の平井健裕氏

 「Microsoft AI Co-Innovation Labは世界に6カ所あり、うち3カ所が2023年に開設された。製品を生み出すためのプロジェクトにはさまざまなステップがあるが、専任技術者がサポートする体制によって、プロジェクトを加速していくことがこの施設の狙いになる」(平井氏)

 AIの進化のスピードは予測以上に速い。AIを事業の核にする方向へ大きくかじを切ったMicrosoftが顧客と伴走することで、個社では獲得することが難しい技術支援や知見を得られる。

 「『AIが何か分からない』、漠然と『AIについて勉強したい』と考えているお客さまをターゲットにした施設ではない。もっと具体的に、開発に悩む企業をサポートすることが目的になる」(平井氏)

 同氏の言葉を聞くと、参加企業の数を増やすより、参加企業と共にAIプロジェクトを成功へ導くことがこのラボの目的であることが分かる。Microsoftの資料によると、「探検する=マイクロソフトの技術を紹介し、利用例を探検する」「実証する(PoC)=お客さまのユースケースに合わせたPoCのアーキテクチャーと共同開発を支援」「製作する=お客さまのユニークなソリューションの製品化をサポート」――という3ステップで短期間に開発完了するための伴走を行うという。利用者をやみくもに増やせば、本来の狙いとは違う方向に進んでしまうだろう。


 なお、この施設の利用は、ウェブサイトから申し込んで承認を受け、契約を締結した後になる。利用料は無償という。それで懇切丁寧にユーザーをサポートするMicrosoftにどんなメリットがあるのだろうか。

 「AIを使ったプロダクトを開発する企業の皆さんと緊密な距離にいることで、マーケティング調査よりも率直な声を聞ける。ユーザーに変化が起こった際も、この施設を通してきちんとキャッチアップできるだろう」(平井氏)

 ユーザーにとっては、最新のAIテクノロジーを知ることができ、そのテクノロジーや技術を提供するMicrosoftにとっては、ユーザーのニーズや既存技術の足りない部分などを知る機会になる。ユーザーとメーカーの双方にメリットがある施設ということだ。

壁面の絵はOpen AIが描いた絵にアーティス「Moe Notsu」の絵を組み合わせたもの。人間とAIの協力で生まれた
壁面の絵はOpen AIが描いた絵にアーティス「Moe Notsu」の絵を組み合わせたもの。人間とAIの協力で生まれた

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    Pマーク改訂で何が変わり、何をすればいいのか?まずは改訂の概要と企業に求められる対応を理解しよう

  2. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  3. セキュリティ

    クラウド資産を守るための最新の施策、クラウドストライクが提示するチェックリスト

  4. セキュリティ

    最も警戒すべきセキュリティ脅威「ランサムウェア」対策として知っておくべきこと

  5. セキュリティ

    AIサイバー攻撃の増加でフォーティネットが提言、高いセキュリティ意識を実現するトレーニングの重要性

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]