Sansanは1月31日、「電子帳簿保存法に関する実態調査」の結果を発表した。調査では2023年以降、電子帳簿保存法への対応をした人に、対応に伴う作業時間の増加について聞いた。その結果、経理部門では1人当たり月平均4.5時間、経理以外の部門では1人当たり月平均4.1時間ほど作業時間が増えていることが分かった。
なお電子帳簿保存法の宥恕(ゆうじょ)期間が終了した2024年1月時点での対応率は8割以上だった。また対応時期を聞いたところ、「2023年から対応した」という回答が54.4%と最多で、多くの企業が2023年12月末の宥恕期間終了より前に対応を進めていた。一方で、宥恕期間終了後の「2024年から対応を開始した」組織も19.4%に上ることが分かった。
この調査は、1月17日から1月18日にオンライン形式で実施された。調査対象は請求書関連業務に携わるビジネスパーソン1000人(経理部門:700人、経理以外の部門:300人)。請求書関連業務とは、請求書の受け取り、振り分け、内容確認、支払い申請、支払い承認、経理部門への請求書提出、請求書の仕訳入力、支払いの実施、請求書の保管などを指す。
調査結果では、受け取る請求書の形式によって作業時間が異なっている。最も作業時間が増えていたのは「紙と電子が半々」、続いて「やや紙の方が多い」ケースで、どちらも5時間以上増えていた。電子帳簿保存法では紙と電子の請求書が混在する場合、それぞれの要件に沿った方法で保存する必要がある。そのため作業時間が増えて担当者の大きな負担になることが予測されるという。
請求書形式と作業増加時間の相関(経理担当者1人当たり)
宥恕期間終了後も電子帳簿保存法に対応していない企業にその理由を聞いたところ、最も多かったのは「紙の請求書の受け取りが多く、電子保存は予定していない」(26.6%)だった。この回答をした人に、今後も紙の運用を続ける理由を聞いたところ「取引先の多くは紙対応だから(運輸・物流業)」など、取引先に合わせて紙で対応しているというコメントが複数寄せられたという。
電子帳簿保存法に対応しない理由
また、「社員の高齢化により、慣れないPCの操作業務が制限される(建設・不動産)」「紙での保存が固定化されていてデジタル化への切り替えが難しい(食品・小売・飲食業)」といった回答があった。
電子帳簿保存法に対応しない要因となっている「紙の請求書の受け取りが多い」ことに関して、業界動向を調査した。その結果、紙の受け取りが多い業界の第1位は「建設・不動産」、第2位は「運輸・物流」となった。また「卸・商社」や「食品・小売・飲食」業界でも、半数以上の人が受領する請求書の過半数が紙であると回答している。
業界別「紙の請求書が多い」と回答した人の割合
SansanのBill One事業部では、業務時間の増加について、1人当たりの増加時間から推測すると部門全体の増加量はより多くなっているはずだとしている。対策としては請求書業務のデジタル化を挙げ、時間やコストの削減はもちろんのこと、環境への貢献や事業継続計画(BCP)対策の面でもメリットがあるとしている。