SAPジャパンは2月15日、2024年の事業戦略について記者説明会を開催した。2024年を「ビジネスAI元年」と位置付け、生成AIなどの機能を製品に組み込んでいくことで経営に役立つデータを提供していくと強調した。
代表取締役社長の鈴木洋史氏はまず、2023年通年のグローバル業績を説明。クラウド事業の売り上げは20%増(固定通貨換算ベースでは23%増)の136億6000万ユーロとなり、「SAP S/4HANA Cloud」の売り上げは67%増の34億9000万ユーロ(同72%増)だった。
また、クラウドおよびソフトウェアの売り上げは6%増の269億3000万ユーロ(同9%増)、総売り上げは6%増の312億1000万ユーロ(同9%増)だった。向こう12カ月間のクラウドの売り上げとして見込む「カレント・クラウド・バックログ(Current Cloud Backlog)」は25%増の137億5000万ユーロ(同27%増)で、過去最速のペースで増加したと鈴木氏は好調なクラウド事業の勢いをアピールした。
その上で、SAPジャパンにおける2023年度の総売り上げは前年度比で12%増だったとし、グローバルの成長を上回った。「特に第4四半期の総売り上げは17%増で2023年度の業績をけん引した。日本でもERP領域でクラウドが当たり前の選択肢となったと実感できる1年となった」(鈴木氏)
鈴木氏は、2024年を「ビジネスAI元年」と位置付け、同社の全製品ポートフォリオにAIを組み込んでいくことを改めて強調した。「『ビジネスAI』とは、ビジネスですぐに使えるように、SAPが提供するAI機能の総称になる。MicrosoftのOpenAIやGoogle、Amazon、IBMといったAIエコシステムを全面的に活用し、それらのAI基盤として『SAP Business Technology Plaform(BTP)』が役割を果たす。そして、各クラウドアプリにSAP BTPを通じてAIを組み込み、ビジネスプロセスの徹底的な自動化、予測業務の高度化を支援していく」
ビジネスAIのアプローチ
また、デジタルアシスタント「Joule」の自然言語対応も強化していく方針も示した。「プライバシーを保護しながら安全でセキュアな方法で、SAPのクラウドソリューションにあるビジネスデータを大規模言語モデル(LLM)と統合していく。これにより、生成AIを使った真の意味で経営に役立つデータを提供していく」(同氏)
Jouleは2023年11月から「SAP SuccessFactors」で利用可能になっており、2024年第1四半期には「SAP S/4HANA Cloud, public edition」やSAP BTPでも提供していく予定としている。
ビジネスAIを最大限に有効活用するため、ERPに業務を合わせるフィット&スタンダードの手法やERPのコア機能をカスタマイズせずに使うクリーンコア戦略をより一層推進する。鈴木氏は「従来のようにERP上でアドオン開発を行うのではなく、SAP BTP上で拡張機能を構築することで、ERPのアプリケーション部分をクリーンに保ちながら、固有要件に対応することが可能になる。これによりアップデートが容易となり、ビジネスAIの機能もすぐに使えるようになる」と話す。
SAP S/4HANA CloudとSAP BTPを組み合わせたオファリングとしては、大企業向けの「RISE with SAP」と中堅中小企業向けの「GROW with SAP」がある。NECやダイキン工業、日立造船などが2023年にRISE with SAPを採用し、GROW with SAPはNKKスイッチズ、赤城乳業などがユーザーとなっているという。
鈴木氏は2024年の注力領域の一つとしてパートナーエコシステムの拡大を挙げた。2023年はパートナー再販によるクラウドビジネスが44%増で、新たなパートナーとして42社が加わった。またSAPの認定コンサルタントは11%増で、特にパブリック版SAP S/4HANA Cloudのコンサルタントは倍増したという。
その上で、2024年は「新規パートナーの拡大・強化」「パートナーの自走ビジネスの実現」「導入成功への支援と伴走型協業」「パートナーソリューションの拡販支援」の4つにフォーカスするとのこと。
また説明会では、社会課題の解決・サステナビリティーの取り組みや、中期変革プログラム「SAP Japan 2026」なども紹介された。
SAPジャパンによる社会課題の解決・サステナビリティーの取り組み
中期変革プログラム「SAP Japan 2026」について