Linuxにとって2004年は、たくさんの出来事があった1年だった。筆者も記事にしたが、当時はSCOがLinuxを継続不能に追い込もうとしていた。またこの年は、Red Hatが「Red Hat Linux 9」の提供を終了して、企業向けのディストリビューションである「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)をリリースし、エンタープライズ顧客を優先して、エンドユーザーのファンを切り捨てる決断をした年でもある。そして、南アフリカの富豪であり、宇宙飛行士でもあったMark Shuttleworth氏が、「Ubuntu Linux」の開発会社であるCanonicalを立ち上げたのもこの年だった。
Ubuntu Linuxの最初のバージョンは、ダウンロードで入手することができたほか、無料でインストール用のCDを郵送してもらうこともできた。
提供:Steven Vaughan-Nichols/ZDNET
その頃の筆者は(あるいは他の誰も)、Canonicalが世界有数のLinux企業になるなどとは思っていなかった。
Shuttleworth氏はそれ以前に、セキュリティサービスと大手認証局(CA)を提供する企業であるThawte Consultingを設立し、その後売却して巨万の富を築いていた。同氏の関心はお金儲けだけではなかった。「Debian Linux」の開発者だったという経歴もある同氏は、Thawteの売却益を元手に、英国でCanonicalを設立した。
Canonicalの目的は初めから、フリーソフトウェアやオープンソースソフトウェアを支援し、共有することだった。実際、同社のOSであるUbuntuの語源は、ズールー語の「Umuntu ngumuntu ngabantu」という言葉にある。Linux業界を除けば、現代の「Ubuntu」という言葉は、故Desmond Tutu大司教の発言と結びつけられて語られている。同氏は著書「No Future Without Forgiveness」(許しなくして未来はない)の中で、「Ubuntu」を備えた人物は、「他者に対してオープンで寛容であり、他者を肯定する」と述べていた。
馴染みのある考え方だと思わないだろうか。Shuttleworth氏は、Ubuntuの最初のバージョンである「Ubuntu 4.10 Warty Warthog」をリリースした際、次のように述べている。
「Ubuntu」は「他者に対する慈愛」を意味する古代アフリカの言葉であり、私たちは、この言葉はオープンソースコミュニティプロジェクトの名前としてぴったりだと考えている。私たちはその精神に基づき、皆さんにもコミュニティに参加し、貢献し、Ubuntuを共有してほしいと思っている。
これはつまり、Ubuntuの最初のモットーである、「人間のためのLinux」ということだ。
当時も今も、UbuntuはDebian Linuxをベースにしている。期日に遅れがちなDebianとは違って、Ubuntuは6カ月ごとに最新のデスクトップ、カーネル、インフラを規則正しくリリースしている。Canonicalはこの20年間、Ubuntu 6.06のリリースを例外として、そのペースをずっと守ってきた。