ガートナージャパンは5月8日、世界のデータ/アナリティクスのリーダーを対象にした最新の調査結果を発表した。これによると、61%の組織が破壊的な人工知能(AI)テクノロジーの影響を受けて、データ/アナリティクス(D&A)のオペレーティングモデルの進化や再考を余儀なくされていることが明らかになった。
米Gartnerの年次調査「最高データ/アナリティクス責任者(CDAO)サーベイ」は、世界各国のCDAO、最高データ責任者(CDO)、最高アナリティクス責任者(CAO)479人を対象として、2023年9~11月に実施された。
ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストのAlan D. Duncan氏は「D&AテクノロジーとAIテクノロジーの急速な進化を受け、CDAOはオペレーティングモデルの変革を早急に推し進めている」と話す。
CDAOが対応を急いでいるのは、データガバナンスを中核に据えたデータドリブンなイノベーションを支援し、組織のアジリティー(俊敏性)を加速させるためだという。
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D&Aオペレーティングモデルを現在/将来の目的に適したものにするために、CDAOはどのような変更を加えるべきかという問いに対して、CDAOの38%が今後12〜18カ月の間にD&Aアーキテクチャーを抜本的に見直すと回答した。回答者の29%は、データ資産の管理方法を刷新し、ガバナンスポリシー、プラクティス、標準を採用/適用すると答えている。
Duncan氏は「組織のD&Aオペレーティングモデルの管理は年々増大しているが、データガバナンス、D&A倫理、データリテラシー/AIリテラシーなど、AIの主な実現要因の多くに対して責任を負う役割は、CDAO以外にない。予算とリソースの制約の問題が深刻になるにつれ、CDAOの役割の責任範囲も拡大している」と述べる。
CDAOが担う主な責任は、D&A戦略の管理(74%)とD&Aガバナンス(68%)になる。また、AIに対する説明責任を果たすこともCDAOの重要な課題となる。調査では、CDAOの49%が、生成AIは自身の主な責任の範囲に含まれると回答した。AIは、CDAOの58%にとって責任の範囲内であり、この割合は2023年の34%から増加した。
責任の拡大はCDAOにとって大きな代償を伴う。前年比で資金が増加したと回答したCDAOのうち、46%は予算の制約が課題であることに変わりはないと答えた。Duncan氏は「最高財務責任者(CFO)に対し、より優れたビジネスケースを提示できるCDAOは、D&Aイニシアチブへの資金提供をいち早く受けることができる。また、経営幹部の強い賛同も得られる」とコメントする。
CDAOは、D&Aのための資金提供の枠組みを変更することによって、これらが組織にとってどれだけ有益で実行可能で、推進力を持っているか、その価値をどのように変化させるかをCFOに伝える必要がある。「一方で、調査対象となったCDAOのうち、ステークホルダーがD&Aの価値を追跡できるような、ビジネス・アウトカム・ドリブン・メトリクス(ビジネス成果主導型の評価指標)を確立しているCDAOは49%に過ぎない。さらに、34%はD&Aのビジネス成果型の評価指標を確立していない」(Duncan氏)
CDAOは目標達成のために、自身の力と影響力を高める必要があり、また組織の価値推進要素と問題点を隅々まで把握して取締役会に示さなければならない。Duncan氏は「2026年までに、組織全体への影響力と測定可能なインパクトを最優先課題としないCDAOの75%は、テクノロジー部門に吸収されることになるだろう」と指摘する。
シニア ディレクター アナリストの一志達也氏は「本調査は、日本からも76人が回答者として参加している。日本の回答者と、それ以外の海外の回答者の回答内容を比較すると、日本企業における人材やスキルの枯渇感は、海外企業と比較しても2倍以上となっており、深刻さが浮き彫りとなった。また、IT、セキュリティ、D&A、DXと幅広い役割を単独のリーダーが担う結果、その役割や責任が曖昧になっていることも分かった」と語る。
加えて、「D&AやAIのような先進的で専門性の高い取り組みのリーダーは、できるだけその役割や責任範囲を明瞭にし、経営戦略に直結したビジネス成果を出せるよう、経営層と密接なコミュニケーションを行える立ち位置でいる必要がある。そのためには、経営層から信頼され期待を持たれる存在となれるよう、その価値を分かりやすい形で示すことが求められる。この一見すると矛盾する問題に対処できるリーダーは貴重だが、成功している先駆者は例外なくそうしたリーダーが活躍している」とコメントした。