岐阜県に本社を置く中部薬品は、国内全400店舗にAIを活用した「需要予測型自動発注システム」を導入し、2023年8月から稼働させている。提供元の日立システムズが5月15日に発表した。
中部薬品は自社が持つ棚割システムと需要予測型自動発注システムを連携させたことで、全体の自動発注率が15%向上し、日配品(日持ちのしない加工食品)に限ると60%向上した。これにより、1週間の発注作業時間が約600時間削減された。加えて、商品改廃時の在庫制御機能「売り減らし機能」により、円滑なマーチャンダイジング(MD)サイクルを実現し、店舗在庫量の圧縮・適正化と商品回転率の向上につながったという。
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ドラッグストア・調剤薬局チェーン「V・drug」を展開する中部薬品は、AIを活用した需要予測など新たな仕組みを模索してきたが、これまでのシステムでは予測精度が低いほか、日配品など変動性の高い商品が対象外になることや、発注までを自動で行えないことを課題としていた。同社は、精度の高い需要予測と在庫適正化にまでつなげる発注制御機能を兼ね備えている点や導入実績を評価し、需要予測型自動発注システムを導入したという。
需要予測型自動発注システムは、変動要因となる30種類の要素データを分析する需要予測計算によって、従来は難しかった消費期限の短い日配品でも需要や適正在庫を予測する。特売や季節行事などのイベントを加味した需要を予測することも可能だ。
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中部薬品では、商品の陳列場所/数や販売のタイミングなどの棚割に関する情報が入力された既存の棚割システムと連携しながら需要予測型自動発注システムが需要予測を行い、その情報に基づいて発注量を提案する。各店舗では毎朝、需要予測型自動発注システムが推奨した発注量を確認することで発注作業を完了できている。
シーズンごとに実施する商品の入れ替えなどの棚割計画情報との連携により、棚替時の発注作業をサポートする。新商品や代替商品への入替時には、予定日に向けて売り減らし機能を活用して在庫を自動抑制することで、円滑な商品改廃につなげる。
中部薬品における従来のシステムでは、商品単品単位で最低限保管しておく「安全在庫」を設定しており、運用上負荷となっていた。需要予測型自動発注システムでは、特設コーナーの設置などに当たり多めに発注する「演出在庫」や、関連するコストの総額を最小化する発注量「経済的発注量」の調整パラメーターなどを商品分類単位で設定できる。これにより、在庫や発注の量をコントロールする運用が可能となり、システムの運用負荷を軽減している。
中部薬品は、物流在庫センターに対して対象商品の30日先までの販売予測データを提示することでセンターの在庫を最適化し、店舗への配送遅延防止につなげる施策を検討している。日立システムズは今後、中部薬品への導入で効果が実証された「AIを活用した需要予測と発注制御の仕組みによる在庫適正化や売場利益の最大化」を他業種にも展開し、導入実績の拡大を目指すとしている。