企業セキュリティの歩き方

銀河英雄伝説で考えるセキュリティ--ITにもある「高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処」

武田一城

2024-05-24 06:00

 本連載「企業セキュリティの歩き方」では、セキュリティ業界を取り巻く現状や課題、問題点をひもときながら、サイバーセキュリティのスキルを向上させていくための視点やヒントを提示する。

 これまで「銀河英雄伝説」の世界観を題材に、サイバーセキュリティについて語ってきた。銀河英雄伝説は、長編のSF小説かつアニメ―ションで、現実でも起こり得そうなさまざまなエピソードの宝庫であり、その世界観とサイバーセキュリティ分野を対比的に記してきた。今回は、より具体的なエピソードに踏み込んでいきたい。

 それは、銀河英雄伝説の中でも最も知られた名言となる、自由惑星同盟(同盟)の若き准将のアンドリュー・フォークの「高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処(することになろうかと思います)」だ。

 フォーク准将は、同盟の高級作戦参謀である。この奇妙な名言を発したタイミングは、同盟軍として、この物語の歴史上最大規模の作戦を説明する会議での立案の根拠や目的についての質問の時だ。そこで述べた、この「高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処」という発言は、全く具体性がなく、とても大規模作戦の目的と言えるものではなかった。これが壮大な銀河英雄伝説の物語の中で、最大のツッコミどころだと言っていいシーンだ。

 今回は、この「高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処」という台詞に類似したITやセキュリティの運用現場でもよく観測される事象の背景、状況について記していく。

軍隊における「准将」の立ち位置

 「准将」という階級は、軍事や軍隊に詳しい人でなければ、知る人は少ないだろう。大将や元帥、少尉や少佐など一般でも聞き覚えのある階級と違い、准将はかなりマイナーかもしれない。

 軍隊の階級は、有名な人物とセットで認識されることも多い。例えば、第2次世界大戦後の日本に進駐軍トップとして訪日したマッカーサー元帥は、教科書にも掲載されている。そのため、ほとんどの人が元帥という階級とペアで認識している。それ以外にも、旧日本軍の山本五十六大将などが有名だ。

 また、国民的アニメとなった「ワンピース」でも、主人公のルフィと戦うことが多い海軍の海兵たちは、かなりの割合で「名前+階級」で呼ばれる。ワンピースにおける海軍組織の有名なトップは「元帥のセンゴク」であり、ほかにも「黄猿」「青雉」などの通称がある大将が存在する。「機動戦士ガンダム」に登場する「シャア少佐」(アニメ後半では中佐、大佐と昇進)も有名だろう。このように、軍の組織にそれほど詳しくない人でも、アニメの登場人物のイメージで階級を意識している場合がある。

 しかし、旧日本軍や現在の自衛隊には、准将に当たる階級が存在しないため、そのような立場の人物も一般的には無名だ。自衛隊には「将補」という階級が存在するが、自衛隊の将官は「幕僚長」「将」「将補」の3階級で、名称は似ているが准将とは少し異なる。さらに言えば、アニメなどフィクションの世界でも「有名な准将」があまり多くないこともあり、結果として、准将と言えば、銀河英雄伝説のアンドリュー・フォーク准将となるのだ。

 いずれにしても、准将は大佐より高い階級であり、この階級を持つ米軍や北大西洋条約機構(NATO)加盟国の軍隊でも、このクラスになると、参謀などの特殊な例を除けば、一般的に数千人の配下を持つ。つまり准将は、押しも押されもしないエリート軍人と言えるだろう。

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