Pure Storageは米国時間6月18~21日、米ラスベガスで年次イベント「Pure//Accelerate 2024」を開催した。通例通りに多数の発表が行われたが、高密度大容量のフラッシュモジュール「DFM」のロードマップを公開すると同時にHDD市場の終焉(しゅうえん)を宣言した2023年に比べると今回の発表内容はソフトウェアやサービスの刷新が中心となっている。少々地味な印象も受けるが、その真意はどこにあるのか。本記事は、会場で直接話を聞く機会が得られた同社の技術開発戦略をリードする立場のエグゼクティブたちのコメントを中心に紹介する。
2024年の発表の中核と位置付けられるのは「プラットフォームの拡張」だ。「Pure Fusion」の機能拡張と提供モデルの変更で、今後は複数台のストレージを統合して単一のコントロールプレーンから管理する機能が標準で利用できるようになる。併せて、いわゆるAIOpsの取り組みとして「AI Copilot for Storage」なども発表されており、運用管理のシンプル化が大きなテーマとなっている。同時に、GPUマシンによるAIワークロードに接続するストレージとしての機能強化の取り組みも発表されているが、こちらは別記事にて紹介する予定だ。
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Pure Storageの製品戦略
CPOのAjay Singh氏
まず同社の製品戦略全般について、最高製品責任者(CPO)のAjay Singh氏に聞いた。同氏が2024年の発表内容を理解する上での重要な前提と指摘したのは2023年に発表された「Pure//Eファミリー」だ。具体的な製品としては「FlashArray//E」「FlashBlade//E」があり、いずれも容量当たりの単価でHDDを下回る価格で導入可能となることを目指した製品だ。これらの製品が2023年のHDD市場の終焉宣言の根拠となっている。
この製品により「従来の高性能が求められる用途に加えて、Pure Storageの製品は顧客のあらゆるユースケースに対応できるようになった」とSingh氏は語る。従来と比較して適用範囲が拡大され、さまざまなシステムで利用されるようになったことで、対応すべき要件も拡大したという。
同氏は、顧客企業が抱える「サイバーレジリエンスとランサムウェア」「AI」「モダンアプリケーションへの移行」「クラウドの最適化」という4つの課題に対応するとした上で、Pure//Accelerate 2024では主にサイバーレジリエンスとAIについて発表し、残るモダンアプリケーションとクラウド最適化については追って発表の機会を設ける予定だとした。
以前からフラッシュストレージはパフォーマンスでは圧倒しており、運用管理面でも故障発生の予測が難しいHDDよりも消耗具合を緻密に把握可能な点でメリットがあると評価されていたものの、バイト単価ではHDDがまだ優位とされており、アーカイブ用途など、パフォーマンスが遅くても大容量を安価に導入できることが重要な用途には当面HDDが使われ続けられるだろうと考えられていた。
しかし、Pure//Eファミリーの投入によってバイト単価においてもHDDの優位性が失われた結果、逆に従来は特に求められていなかった容量指向のユースケースにも対応が求められるようになる変化が生じた。Singh氏が言う「4つの課題への対応」は、まさに対応するユースケースの幅が広がったことで求められる機能要件が増えたことであり、その変化に着実に対応していく方針だと理解してよいだろう。