小売業界では売り上げの向上やコストの削減に向けて、商品の需要予測などのデジタル施策を行う動きが強まっている。しかし華やかな施策の実施には、地道な「商品マスターの登録」が必須であり、取り扱う商品の数が多いほど膨大な時間と労力を要する。こうした課題に対してLazuliは、AIを用いて商品データの統合・生成・加工を支援するクラウドサービス「Lazuli PDP(Product Data Platform)」を展開している。
Lazuliは、リクルート出身の代表取締役CEO 兼 CTOの萩原静厳氏とCOOの池内優嗣氏が2020年に立ち上げた企業。顧客企業数は25社前後だが、ベイシアやアサヒ飲料、パナソニック、ニトリなどの大手企業が名を連ねる。東京大学大学院の松尾豊教授もAIアドバイザーとして参画し、技術的なアドバイスを定期的に提供している。
Lazuliは、どのような技術を用いて商品マスター登録業務を支援しているのか。Lazuli PDPの活用により、顧客企業ではどのような成果が出ているのか。COOの池内氏に聞いた。
Lazuli COOの池内優嗣氏
商品マスターの登録では通常、(1)商品データの収集、(2)商品データの生成・加工・活用――を行う必要がある。(1)では自社が取り扱う商品データを一つずつ調べ、「Excel」シートなどにコピー&ペーストし、(2)ではデジタル施策に適した形で商品データを生成・加工してシステムに配信しなければならない(図1)。
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池内氏は「最近はAIを活用したデジタル施策を行う動きが強まっているが、商品データが“歯抜け”の状態では、デジタル施策は動かない。例えば商品の需要予測を行おうとしても、入力したデータが整備されていないと正しい予測ができない」と指摘する。
商品マスターの登録は、ECサイトの運用でも必要となる。自社ECサイトのほか、「楽天市場」などのECモールに出品する場合は、各モールの仕様に沿って商品名の入力やカテゴリーの選択を行わなければならない。「1商品の出品登録にかかる時間は約45分。1万商品を登録するには約937営業日を必要とし、1人専任では約4年かかる」と池内氏は担当者の負担を力説する(図2)。
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地道な商品マスターの整備事業を開始した背景には、萩原氏と池内氏自身が直面した課題がある。当初はAIを活用したコンサルティング事業を行っていたが、商品マスターが有するデータの内容や整備が不十分でAIの活用を断念してしまうことが多かった。同氏は「技術やノウハウを持つわれわれが商品マスターの整備を担えば、世の中のDXが進むと思った」と振り返る。