最高情報責任者(CIO)の役割は、一般的に企業や組織内のITシステムを担い、テクノロジーの活用と推進を通じてビジネスや業務に貢献することだろう。近年は、DXを背景に新規事業へのコミットなどにも広がりつつある。そうしたCIOの役割について、ITセキュリティベンダーではユニークな点が見られるようだ。Palo Alto Networksのシニアバイスプレジデント CIOのMeerah Rajavel(ミーラ・ラジャベル)氏に、日々の活動や役割などを尋ねた。
Rajavel氏は、Palo Alto Networks以前ではCitrix SystemsやForcepoint、McAfee、Cisco Systems、Infosys、Nortelといったテクノロジーおよびセキュリティベンダー各社で25年以上にわたり、CIOやそれに相当するような業務に携わってきたという。
Palo Alto Networks シニアバイスプレジデント CIOのMeerah Rajavel氏
「実は、私のキャリアのスタートは製品開発部門でテクノロジーを構築する仕事でした。その経験から、社内のITをけん引するだけではなく、自社製品を最初に利用する『顧客』の立場にいます。実際の顧客が製品を利用する前にアルファ版、ベータ版の顧客として製品を評価し、製品部門と協力しながら実際の顧客がより良い形で製品を利用できるように貢献します。少し特殊な立場かもしれません。私の部門は、時に当社製品の方針や実際の顧客に提供する価値にも影響しています。つまり、社内と社外の双方に向き合う立場です」
Rajavel氏は、そのユニークな経歴から、現在のCIOには4つの果たすべき重要な役割があると話す。1つ目は自社のトップライン(売上高)の成長をどのように実現させるか、2つ目はボトムライン(コストなど)をどう改善させるかだという。
「もはやCIOは、従業員にラップトップ(ノートPC)を提供しているだけでは不十分なのです。トップラインを伸ばし、ボトムラインを削減する。効率性や生産性を高め、コストを削減します。日本ではコスト削減に重きが置かれていますね」
3つ目は、イノベーションの実現になる。「あらゆる企業が何らかのイノベーションに取り組んでいます。イノベーションの実現では、時に社内で、効率性を重視するのか、スピードを優先するのかといった摩擦が起こりがちですが、その両面をどう可能にしていくかが重要です」。4つ目は、従業員の生産性向上とセキュリティを中心とする安全性の確保だという。
「これらがCIOの役割です。テクノロジーは手段であり目的ではありません。私たちCIOは、テクノロジーをどのように活用して目的を確実するかであり、ビジネスへの貢献です。もちろん、テクノロジーに夢中になって、ビジネス上の成果を忘れてしまうこともあるでしょう。これも重要なのです。テクノロジーを無視することもできません。テクノロジーとビジネス貢献は、CIOが持つ唯一無二の価値なのです。その価値を経営陣に提供します」