DeepSeek「R1」の精度に迫る、グーグルの「Gemma 3」--処理能力と効率性を両立

Tiernan Ray (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2025-03-18 07:00

 AIの経済学が話題になる中、DeepSeekはGPUチップの展開において目を見張るような規模の経済を体現している。

 ほかの企業も負けてはいられない。Googleは米国時間3月12日、最新のオープンソース大規模言語モデル(LLM)「Gemma 3」が、推定計算能力のごく一部でDeepSeekのLLM「R1」に迫る精度を出したと発表した。

 Googleは、対戦型の競技に広く使用されている指標「イロレーティング」を用いながら、Gemma 3のスコアがDeepSeekのR1の98%に達していると主張している。R1のスコアは1363なのに対し、Gemma 3のスコアは1338である。

 現時点では、R1はGemma 3よりも優れているといえる。しかしGoogleの推定によると、R1のスコアを達成するにはNVIDIAの主流GPUチップ「H100」が32個必要だが、Gemma 3ではH100 GPUを1個しか使わないという。

 Googleは、同社の計算リソースとイロレーティングのバランスが非常に良いとしている。

 Googleは同社のブログ投稿で、Gemma 3を「単一のGPU、またはTPUで実行できる最も高性能なモデル」と称し、同社が独自開発した機械学習(ML)特化型のプロセッサー「Tensor Processing Unit」(TPU)に言及している。

 この投稿では「Gemma 3は、そのサイズとしては最先端の性能を発揮し、LLMの性能を評価するオープンソースプラットフォーム『LMArena』のリーダーボードにおいて、人間のフィードバックに基づく初期段階の評価では、『Llama 3.1 405B』『DeepSeek V3』『OpenAI o3-mini』を上回る結果を出している」とイロレーティングを参照しながら伝えている。

 「これにより、単一のGPUまたはTPUホスト上で動作する魅力的なユーザー体験を実現できる」

提供:Google
提供:Google

 Googleのモデルは、16個のGPUが必要と推定されるMetaの「Llama 3」のイロレーティングを上回っている。ただし、競合他社が使用しているH100チップの数はGoogleの推定値であることに注意してほしい。DeepSeekは、NVIDIAの「H800」GPUを1814個使って、R1で回答を提供する例だけを開示している。

 より詳細な情報は、HuggingFaceの開発者ブログ記事で紹介されており、Gemma 3のリポジトリーも提供されている。

 データセンターよりもデバイス上での使用を目的としたGemma 3は、R1やその他のオープンソースモデルよりもパラメーター、あるいはニューラルネットワークの「重み」の数値が大幅に低い。一般的に、パラメーターの数が多いほど、より高い計算能力が必要となる。

 Gemmaのコードにおけるパラメーター数は10億、40億、120億、270億となっており、現在の基準ではかなり少ない。これに対して、R1のパラメーター数は6710億であり、ネットワークの一部を計算に含めない、または停止することで、そのうちの370億を選択的に使用できる。

 このような効率化を実現するのは、広く用いられているAI技術「知識蒸留」である。同技術は、大きなモデルから学習済みのモデルの重みを抽出し、それをGemma 3などの小さなモデルに転送することで、そのモデルの能力を強化する。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    KADOKAWAらの事例に学ぶ、2024年サイバー攻撃の傾向と対策

  2. セキュリティ

    MDMのよくある“12の悩み”を解決!Apple製品のMDMに「Jamf」を選ぶべき理由を教えます

  3. ビジネスアプリケーション

    生成AIをビジネスにどう活かす?基礎理解から活用事例までを網羅した実践ガイド

  4. セキュリティ

    セキュリティ担当者に贈る、従業員のリテラシーが測れる「情報セキュリティ理解度チェックテスト」

  5. セキュリティ

    「100人100通りの働き方」を目指すサイボウズが、従業員選択制のもとでMacを導入する真の価値

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]