UiPath、AIエージェント活用した自動化ソリューションを国内展開

藤本和彦 (編集部)

2025-04-17 09:30

 UiPathは4月16日、エージェンティックオートメーションを活用したソリューションに関する記者説明会を開始した。2025年第2四半期中には、エージェンティックオートメーションの関連製品を日本市場向けに順次展開していく。

 プロダクトマーケティング部 部長の夏目健氏はまず、同社プラットフォームのこれまでを振り返った。2017~2018年にロボティックプロセスオートメーション(RPA)を活用した自動化ソリューションの提供を開始。その後、ユーザーのニーズに応え、API統合やローコードアプリケーション連携、さらにAIなどを追加することで、自動化の幅を広げてきた。最近では、AIエージェントを自動化の中心に据え、人間の作業を模倣して実行することで、より広範な自動化ソリューションを提供する。同社はこれを「エージェントオートメーション」と呼んでいる。

 「ユーザーが日常的に行っている作業やタスクを自動化するワークフローを提供する。このワークフローは、エージェントやロボットによる自動化だけでなく、エージェントやロボットが行った作業を人間がチェックし、承認するヒューマンインザループ(HITL)にも対応している。さらに、自動化フローが安定して動作するように、テストの仕組みも備えている」(夏目氏)

 さらにプロセスでは、一人の作業だけでなく、複数の関係者が関わる業務プロセスや、複数の部門にまたがる業務プロセスも含めた、エンドツーエンドの自動化を目指すことになる。そのため、多くのエージェントとロボットが関与し、これらをどのように連携させて業務に適用するかが、エージェントオートメーションにおいて非常に重要となる、と同氏は強調する。

 UiPathは、エージェンティックオートメーションを実現する製品戦略として、エージェンティックオーケストレーションの「UiPath Maestro」、エージェンティックソフトウェアテストの「UiPath Test Cloud」、インテリジェントドキュメント処理の「UiPath IXP」の3つをラインアップする。UiPath Test Cloudは4月14日に提供済みで、UiPath MaestroとUiPath IXPは2025年第2四半期に提供予定となっている。

 UiPath Maestroは、同社のエージェントオートメーションを支える製品であり、AIエージェント、ロボット、人をオーケストレーションし、管理するためのプラットフォームとなる。ユーザーの業務プロセスに自動化を適用・改善していくため、モデル化、実装、運用、監視、最適化といったプロセス全体をサポートする。

 モデル化はプロジェクトの設計段階に相当し、ビジネスプロセスモデリング表記法(BPMN)など業界標準の表記法を用いて業務プロセスを設計する。実装段階では、モデル化した設計図に対してRPA、HITL、APIとしてエージェントのタスクを組み込み、UiPathのプラットフォーム上で実行可能な状態にする。運用段階では、プロセスの実行状況や運用実績の分析を行い、特定のインスタンスの管理を行う。

 監視に関しては、BPMNモデルに統合された分析機能により、過去のインスタンス実行を理解する。最適化では、シミュレーション、ボトルネック検出の機能を活用し、データに基づいた重要業績指標(KPI)の改善を行う。

UiPath Maestroの概要(提供:UiPath) UiPath Maestroの概要(提供:UiPath)
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 UiPath Maestroの提供する価値について、夏目氏は「制御された自律性」「ベンダー依存がない」「プロセスの実行制御」「継続的なプロセス最適化」の4つを挙げた。

 UiPathのエージェンティックオートメーションでは、自動化をワークフローとして実装し、RPAやAIエージェントを組み合わせることで、実行するアクションを定義する。そして、管理された範囲内で自動化を実現する。また、人間が関与することで、チェックやエスカレーション、例外対応などを人が担当し、実際の業務で活用できるエージェントの仕組みを提供する。

 UiPathのプラットフォームはオープンであり、RPAやAIエージェントはさまざまなアプリケーションやシステムにアクセス可能となっている。夏目氏によると、他社のAIエージェントも利用可能という。特定のCRMやERPに限定されず、業務で利用する複数のアプリケーションやシステムにまたがる自動化を実現するという。

 また、稼働中の自動化の状況を把握できるため、監視や管理、問題発生時の修正が可能。これにより、自動化プロセスを安心して業務に適用できる。エージェントオートメーションを含む業務プロセス全体を可視化し、継続的な改善を促進することも可能だ。

 UiPath Test Cloudは、ソフトウェアテストの設計、自動化、実行、分析をカバーするフル機能を搭載したテスト自動化プラットフォームになる。夏目氏は、「ソフトウェアテストは、IT部門にとってコストと時間がかかる大きな課題であり、効率化が求められている。RPAやAIなどの自動化技術に加え、AIエージェントを組み合わせることで、テストライフサイクル全体を自動化、効率化する」と説明する。

 テストライフサイクル全体の生産性を加速する専用エージェント「Autopilot for Testers」と、独自のテストニーズに特化したAIエージェントを個別に構築する開発キット「Agent Builder」で構成される。「テストソリューションにAIエージェントが加わることにより、テスターの業務を拡張、加速、簡素化させることができる」(夏目氏)

UiPath Test Cloudの概要(提供:UiPath) UiPath Test Cloudの概要(提供:UiPath)
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 UiPathはこれまで、インテリジェントドキュメント処理ソリューションとして、メールなどのコミュニケーションデータを分類・自動化する「UiPath Communications Mining」と、さまざまな種類のドキュメントを分類・抽出する「UiPath Document Understanding」を提供してきた。

 UiPath IXPは、この2つの製品を統合し、自動化プラットフォームとしての利便性向上を図った新製品となる。IXPは「Intelligent Xtraction & Processing」の略称であり、「さまざまなフォーマットやマルチモーダルの領域に拡大するという強い意志」(プロダクトマーケティングマネージャーの山崎麟太郎氏)が込められているという。

 UiPath IXPでは、生成AIを用いた非定型ドキュメントの読み取り機能が追加されている。これは、単に生成AIに画像を渡して情報を抽出するだけでなく、UiPath独自の技術とエンタープライズ向けの工夫が組み込まれているという。これにより、ハルシネーション(誤情報の生成)のリスクを防止するなど非定型ドキュメントを信頼性を保ちながら生成AIで読み取り、関連する業務プロセス全体の自動化を実現する。

 「IXPにおける非定型ドキュメント読み取り機能の強化は、UiPathが提唱するエージェントオートメーションを構成する重要な要素としても、非常に意義深いものだと考えている」(山崎氏)

UiPath IXPの概要(提供:UiPath) UiPath IXPの概要(提供:UiPath)
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