ゲーミングプラットフォームと聞いて、最初に「Linux」を思い浮かべる人はほとんどいない。かつてのLinuxは、「Frozen Bubble」や「Tux Racers」といったゲームがリリースされるだけで幸運だった。しかしその後、Loki Softwareが登場し、Linuxでも本格的なゲームが楽しめることを証明した(だがその後、Lokiは廃業し、終わりを迎えた)。
しかし、「Wine」はまだ存続していた。その後も、「Proton」や「SteamOS」が登場した。
今日では、Linuxでのゲームプレイはもはやおまけ的な機能ではない。例えば、一部のディストリビューションはゲーム専用に開発されている(それ以外のディストリビューションの中にも、ゲームに最適なものがある)。読者がそうしたディストリビューションを簡単に見つけられるように、本記事では、筆者のお気に入りのゲーム向けディストリビューションを6つ紹介する。
キーパッドに指を置いて、ヘッドセットを装着してほしい。これから、ゲームを始めるからだ。
1. 「Bazzite」
Bazziteはゲーム専用に設計されたLinuxディストリビューションで、すぐに筆者のお気に入りのゲーム向けディストリビューションになった。Bazziteがゲームに適している理由の1つは、「Steam」のゲームをプレイするのに必要なものが最初からすべてそろっていることだ。
さらに、BazziteはHDRとVRRをサポートしており、System76のCPUスケジューラーを使用してゲームプレイ体験を向上させる。また、コミュニティーによって開発されたツールや修正を追加することで、ゲーム体験とストリーミング体験を効率化している。NVIDIAのGPU「GeForce」用のプロプライエタリーなドライバーを搭載するほか、Linuxゲームを実行するための「Waydroid」も追加されており、「LUKS」によるフルディスク暗号化とゲームコントローラーのサポートも提供する。
Bazziteのもう1つの重要な側面は、SteamOSクローンであることだ。SteamOSを知らない人のために説明しておくと、このOSは「Steam Deck」に搭載されており、Linuxでのゲームプレイに最適だ。実際に、Bazziteはゲームプレイに最も適したLinuxディストリビューションと言えるだろう。
ただし、BazziteはSteamOSの1対1のクローンではないことに注意してほしい。最大の違いは、Bazziteが「Fedora」ベースであるのに対し、SteamOSは「Arch」ベースであることだ。
Bazziteは公式サイトから無料でダウンロードして使用できる。使っているハードウェアに合わせてISOイメージを選択することも可能だ(こうすることで、可能な限り最高のゲーム体験を享受できる)。
2. 「Drauger OS」
Drauger OSは「Ubuntu」をベースとしており、ゲームのパフォーマンスと体験を向上させる最適化と変更が多数施されている。シンプルな変更(カスタムの「Plasma」デスクトップなど)から、極めて複雑な最適化(低遅延のカスタムカーネル、250Hzから1000Hzまでのスケジューリング周波数など)まで、さまざまな改良が加えられている。
Drauger OSは、理想的なゲーミングプラットフォームとなるように、あらゆる部分に改善が施されている。実際に、開発者たちはDrauger OSがゲーム専用に設計されていることを隠そうともしていない。これは普通のデスクトップOSではない。つまり、生産性向上やショッピング、SNS、プロジェクト管理、開発を想定して設計されたものではない。
Drauger OSは、複数のゲーミングプラットフォーム(Steam、「Lutris」「PlayOnLinux」など)をサポートし、さまざまなゲームコントローラーに対応する。さらに、フレームレートの向上、画面のティアリングの軽減、全体的なパフォーマンスの改善を実現する。Drauger OSの唯一の欠点は、インストール方法が標準のUbuntuと少し異なることだ。とはいえ、インストールが難しいわけではなく、方法が異なるだけである。
Drauger OSは無料でインストールして使用できる。
3. 「Ubuntu Game Pack」
より伝統的なUbuntuデスクトップの方が好みだが、ゲーム向けのOSを使ってみたいという人にとって、Ubuntu Game Packは素晴らしい選択肢だ。このディストリビューションは複数のゲーミングプラットフォームをサポートし、さまざまな最適化が施された「GameMode」を提供する。また、通常のUbuntuと同じ使いやすさと標準リポジトリーにあるすべてのアプリも備えている。Ubuntu Game Packには、Steam、Lutris、「Itch.io」「Game Jolt」のほか、PlayOnLinuxや「CrossOver」、Wine、「DoxBox」「ScummVM」なども含まれている。これらの選択肢の中には、無料のものもあれば、有料のものやサブスクリプションベースのものもある。
プリインストールされたゲームはないが、さまざまなサービスを通して、豊富な選択肢を見つけることができる。Ubuntu Game Packには、カスタムした「GNOME」デスクトップ環境が付属している。Ubuntu Game Packの核心をなすのはGameModeだ。GameModeはUbuntuを有力なゲーミングソリューションにするために、同OSに必要な修正を施す。GameModeはデーモンとライブラリーを組み合わせたものであり、CPUガバナーやI/O優先度、プロセスのnice値、カーネルスケジューラー、スクリーンセーバーの抑制、GPUパフォーマンスモード(NVIDIAおよびAMD向け)、GPUオーバークロック(NVIDIA)、CPUコアのピン留めまたはパーキング、スクリプトのカスタマイズなど、特定の最適化を可能にする。
Ubuntu Game Packは無料でインストールして使用できる。