「常時SSL」で懸念される自社サイトへの影響
このように「常時SSL」を実装することでよりセキュアなサイトを構築できるのだが、サイト運営者側に立って考えてみると、さまざまな懸念が出てくるのも確かだ。まず、「サイト全体をSSL化するとレスポンスが遅くなるのではないか」という問題。これについて、中川氏はつぎのように話す。
「米国でインターネットの信頼性向上に取り組む業界団体『OTA』のレポートで、Googleでの常時SSL化によるサーバーCPU影響は1パーセント以下だったという報告があります。この他にも常時SSL化した成功事例が紹介されています。すでに導入済みのSSL証明書をそのまま使えることが多いので、システム担当者が予測していたよりもはるかに低いコストで導入できているというケースが多数です。また、サーバーのCPU性能もマルチコア化によってかなり向上しているので、レスポンスの遅延の懸念はほとんどないといっていいでしょう」
もちろん、今後暗号強度がさらに複雑化すればその処理スピードに影響が出ないとは言えないだろうが、技術的に乗り越えられない課題ではないとしている。
また、別の懸念としては、「SEOへの影響」が上げられる。これまですべてhttpで運営していた時の順位がhttps化することで下がってしまうのではないかという心配である。しかし、中川氏によるとこの心配はhttpのページをhttpsのページに「301転送」の設定することで解消する。実際ジオトラスやベリサインのサイトもそうした措置を取っているという。この方法は「常時SSL」化に効率的に移行する手段としても利用できるものだ。
最後に、日本ジオトラストの上村氏は次のように語った。
「『常時SSL』を実装することで、今後ますますユーザーが意識するネット利用の安全性の問題について、よりユーザーの要望に応えることができます。また、いざと言うときにあわてて対応しなくて済むようにサイト運営計画の中で、しっかりとサイトの安全性を担保してゆくことがこれからの企業には必要なのではないでしょうか」
どのようなユーザーがどんな経路で自社サイトを訪れたとしても、万全の体制で迎える。安心安全は顔の見えないバーチャルの世界だからこそ強く意識しなくてはならない「おもてなし」の作法なのだ。