デジタル変革に関して分かってきたことの中で、もっとも驚くべきことは、「大きな変化は困難だ」ということではなかった。今やその事実は十分に証明されており、広く理解されていると言ってもいいだろう。むしろ重要なのは、どうすれば改革を繰り返し、持続可能な形で進めていけるかだ。
またこれまでの過程で、デジタル変革では、テクノロジよりもむしろ人間に関わる要因が大きな影響を及ぼす場合が多いことが明らかになってきた。
その一方で、技術的な変化によって生まれた課題を目にすることも増えており、一般論として、規模が大きく、歴史があり、テクノロジ業界から遠い組織ほど、技術面での課題も大きくなりがちであることも分かってきた。
ここではまず、よいニュースから話を始めよう。今や過半数の企業が、過去数年の間に、何らかの形でデジタル変革に取り組み始めている。これは、単にマーケティングやサプライチェーンなどの特定の機能に関してだけの場合もあれば、顧客体験や製品やサービスのデジタル化といった、複数の機能にまたがる組織立った変革の場合もある。狙いが何であれ、出てくる課題や重要性の高い問題には、変革の種類を問わず一定のパターンが見えてきている。しかもこれには、業界や地域も関わりがないようだ。
2019年に向けてのデジタル変革の優先課題
それらのパターンについては後述することにして、まずは、そもそも企業がなぜこの困難で、費用がかかり、破壊的で、本業と直接的な関わりが薄いデジタル変革の取り組みに乗り出しているのか、その現在の動機を簡単に見ていこう。
もっとも注意を引くのは、大多数の企業が、2020年までに売り上げの半分がデジタル的な販売チャネル経由になると予想していることだ。さらに世界経済フォーラムは、企業や社会に対するデジタル変革の総体的な経済価値は、2025年には100兆ドルを超えると見積もっている。同様のデータはいくらでもある。これらの数字は、一般的な企業がつかめる可能性があるものとしては、非常に大きなビジネスチャンスになり得る、重要なマクロ経済のトレンドを示している。多くの企業にとって、今得られるもっとも大きな成長のチャンスは、急速に拡大しつつあるデジタル市場の空白地帯を獲得することだ。