検疫ネットワークを探る(2/2)

高崎達哉 2005年06月30日 16時28分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

検疫ネットワークを探る(1/2)で示した通り、現在、ワームによる被害が広まっている。特に、外部でインターネットに接続した際にワームに感染したPCを、企業ネットワーク内に持ち込むことにより、内部から感染が広まるケースが後を絶たない。このような場合の対策として有効だと言われているのが、「検疫ネットワーク」である。本稿では、前回に続いて、検疫ネットワークの仕組みや効果について解説する。

 検疫ネットワークと業務ネットワークを隔離する方式には、大きく以下の4種類が存在する。以降では、それぞれの方式の仕組みと、そのメリット・デメリットについて説明する。

  1. VLAN方式
  2. DHCP方式
  3. ゲートウェイ方式
  4. パーソナルファイアウォール方式

VLAN方式:スイッチでVLANを切り替える

 VLAN方式は、PCが接続されるスイッチのVLAN機能を利用して、PCの接続先を切り替える方式である。最初に、PCがVLAN対応スイッチに接続されると、PCが接続されているスイッチのポートに対して、検疫ネットワークのVLAN IDが割り当てられる(図1)。業務ネットワークには、検疫ネットワークとは別のVLAN IDが割り当てられているため、この時には、まだ、業務ネットワークには接続することができない。

図1 PCが所属するVLANをスイッチが切り替えることで、検疫ネットワークと業務ネットワークを切り替える

 そして、PCは、検疫ネットワーク上の検疫サーバにアクセスし、検疫を受ける。検疫に合格すると、PCが接続されているポートに対して、業務ネットワークのVLAN IDが割り当てられ、業務ネットワークにアクセスできるようになるのである。

 VLAN方式のメリットは、ネットワーク側のエンドのスイッチでアクセス先を切り替えるため、PC1台ごとに確実に制御ができ、安全であるということである。しかし、エンドのスイッチをVLAN対応のものに変更しなければならないというデメリットがある。

DHCP方式:DHCPの動的IPアドレスで切り替える

 DHCP方式では、検疫ネットワークに対して、業務ネットワークとは接続できない(ルーティングされない)ネットワークアドレスを割り当てておく。そして、新規接続PCに対しては、DHCPサーバが検疫ネットワーク用のIPアドレス(仮IPアドレスと呼ばれる)を割り当てるようにする(図2)。

図2 DHCPサーバがIPアドレスを割り振ってPCが所属するセグメントを決める。あらかじめ設定したネットワーク間のルーティング設定の下、接続直後のPCを業務セグメントにアクセスできないセグメントに所属させる。

 このIPアドレスは、検疫ネットワークでのみ有効であり、初期接続PCは、検疫ネットワークにしかアクセスできないことになる。そして、検疫ネットワーク上の検疫サーバにアクセスし、検疫を受ける。検疫に合格した場合には、DHCPサーバが業務ネットワーク用のIPアドレスを割り当て、その後は業務ネットワークに接続できるようになる。

 ルータにIPアドレスによるフィルタリングを施しておくことで、DHCPが割り当てるIPアドレスによってアクセスを制御する方法もある。ルーティングはできるものの、検疫を終えていないIPアドレスからのリクエストをルータがブロックする形態だ。この場合は、最初に一度だけフィルタの対象となるIPアドレス群をルータに設定する必要がある。

 DHCP方式では、VLAN方式のように、ネットワーク機器の変更は必要ないというのがメリットである。しかし、最初から業務ネットワークで使用しているIPアドレスをスタティックに割り当てて接続された場合には、検疫を行わずに業務ネットワークに接続できてしまうという問題がある。

 このため、DHCP方式では、DHCPで割り当てていないIPアドレスを使用して通信が行われた場合には、偽造したARP応答パケットを流すことによって、通信を妨害する仕組みを持っているものも多い。

ゲートウェイ方式:ルータなどが動的にアクセスを制御する

 ゲートウェイ方式では、セグメントを接続しているルータやVPN機器などで、アクセス制御を行う。具体的には、あるクライアントPCからの通信が、ルータなどのゲートウェイを通過しようとした場合に、そのPCがまだ検疫に合格していなければ、業務ネットワークへの通過を許可せず、検疫ネットワークのみに接続できるようにする(図3)。もし、検疫に合格していればアクセス制御が解除され、ゲートウェイを通過できるようになる。

図3 ルータが何らかの方法でPCの検疫状況を調べ、検疫に合格したPC(のIPアドレス)のみを業務ネットワークにルーティングする。

 ゲートウェイ型の特徴は、検疫を終えているのかを調べたり、検疫が終わっていることを確認したクライアントPCに対するアクセス制御を解除するといった作業を、ゲートウェイが自発的に実施する点である。

 ゲートウェイ方式のメリットは、セグメントを接続するゲートウェイのみに検疫機能を加えるだけでよいということである。しかし、ゲートウェイを越えないセグメント内部でのワーム感染には対応できないという問題がある。

パーソナルファイアウォール方式:クライアント側で制御する

 パーソナルファイアウォール方式では、クライアントPC上にあらかじめパーソナルファイアウォールソフトをインストールしておき、そのソフトの機能によって、接続先を制限する。

 まだ、検疫に合格していないPCの場合は、パーソナルファイアウォールは、検疫ネットワークのみに接続を制限する(図4)。そして、検疫ネットワーク上の検疫サーバにアクセスし、検疫を受ける。検疫に合格した場合には、制限が解除され、業務ネットワークに接続できるようになる。

図4 PCみずからが、内蔵するパーソナルファイアウォールのアクセス制御機能を用いて業務ネットワークへのアクセスを制限する。

 パーソナルファイアウォール方式は、ネットワーク側の機能を使用しないため、比較的簡単に導入できるというメリットがある。しかし、すべてのクライアントPCに専用のソフトウェアをインストールする必要があり、そのソフトウェアをインストールしていないPCが接続されてきた場合の対処が難しいという問題がある。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連キーワード
セキュリティ

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

  • ビジネスの継続的な成長を促す新たなITのビジョン

    多くの企業においてITに求められる役割が、「守り」のコスト削減から「攻め」のビジネス貢献へとシフトしつつある。その中でIBMが提唱する新たなビジョンEnterprise Hybrid ITとは?

  • 2/1 Oracle Java & Developers始動!

    最新のクラウド情報やテクノロジー動向をより早くより深くお伝えするために
    WebLogic Channelが生まれ変わる! すべての開発者のための情報ポータルOracle Java & Dvelopers

連載

CIO
研究現場から見たAI
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
内製化とユーザー体験の関係
米ZDNet編集長Larryの独り言
今週の明言
「プロジェクトマネジメント」の解き方
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
Fintechの正体
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
情報通信技術の新しい使い方
三国大洋のスクラップブック
大河原克行のエンプラ徒然
コミュニケーション
情報系システム最適化
モバイル
通信のゆくえを追う
セキュリティ
セキュリティの論点
ネットワークセキュリティ
スペシャル
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
CSIRT座談会--バンダイナムコや大成建設、DeNAに聞く
創造的破壊を--次世代SIer座談会
企業決算を追う
「SD-WAN」の現在
展望2017
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
PTC LiveWorx
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
さとうなおきの「週刊Azureなう」
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
中国ビジネス四方山話
より賢く活用するためのOSS最新動向
「Windows 10」法人導入の手引き
Windows Server 2003サポート終了へ秒読み
米株式動向
実践ビッグデータ
日本株展望
ベトナムでビジネス
アジアのIT
10の事情
エンタープライズトレンド
クラウドと仮想化