IBM Global ServicesのWebサービス&SOA担当バイスプレジデントを務めるMichael Liebowは、IT部門とビジネスリーダーの間を隔てていた壁が崩れてきていると述べている。ITは企業のビジネスモデルをオンデマンド型に変身させるためのかなめであるという、いつもの調子の売り口上で(標準的なIBM Global Serviceのセールスピッチだ)、そういったことに成功したトップレベルの企業を同氏は数社挙げている。これらの企業では、「新しい技術のプロジェクトを、技術に明るい幹部たちが監督し、また、新技術に関する法令遵守や組織統治上の課題をクリアする目的で、役員クラスレベルの専門委員会が設立されている」とLiebowは述べる。ビジネス基盤を徹底的に見直すために多額の資金を費やしているのであれば、役員レベルの人間が資金の使い方を見張るのはもっともなことだ。
Liebowは、建設業界を例に話を展開している。建設業界では、青写真や広く受け入れられたやり方などの標準化されたプロセスを使い、幾層にもわたる管理方法を採用して、プロジェクトの問題発生や失敗を減らしている。Liebowはさらに話を発展させて、青写真の概念や技術に詳しい幹部に関与させる考え方をSOAプロジェクトにも適用し、さらには、標準化された枠組みの中で、独立したコンポーネントを集めてSOAを構築していくことを提案している。
Liebowの結論は、「IT部門とビジネス部門のリーダーは、計画を共有し、共通のゴールを目指して力を合わせていかなければならない。彼らを隔てる壁には小さなヒビが入ってきている。だが、それをさらに広げて、そこに大きな風穴を開けなければならない。そして、究極的には壁そのものを完全に打ち壊して、役員会のリードの下に組織の建て直しを図らなければならない」というものだ。
彼の話には2つのポイントがある。1つは、IT部門とビジネス部門のそれぞれの管理者の間で意識が乖離している問題だ。この点については、昔から討論されてきた。両陣営は物の見方が異なり、なかなか話がかみ合わない。現在成功を収めている企業の多くは、この2つの陣営の間に存在する溝を埋めることが競争力の強化につながることをずっと前から認識した企業だ(FedEx、Wal-Mart、Amazon、Yahooなどがその例である)。21世紀を迎え、企業統治に本格的に取り組むことと、技術系幹部を起用することの重要性を認識する企業が増えてきたことで、ITとビジネスの間の溝が埋まっていくだろう。技術に対する投資が非効率的で、生産工程の短縮や商品のコスト削減などの価値をもたらさないものだったら、競争には勝てないし、すべての利害関係者に対して責任を取ることもできない。
2つ目に、Liebowは、ビジネスソリューションを構築する際のいくつかのリスクをSOAが軽減できると考えているようだ。Webサービス、モデル駆動型プログラミング、使いやすいビジネスプロセス管理ツールなどのような標準化されたソフトウェアインフラは、長期的に見ればITプロジェクトにつき物の複雑さをある程度減らしてくれる。しかし、ナットやボルトのような標準化されたプラグアンドプレイ式の建築用部品を使う建設業界のプロジェクトとは、IT業界は事情が異なる。建設業界と同じようなやり方でITプロジェクトを実施できるようになるまでには、まだまだ道のりは長い。