John Petruzziはつい最近まで、人からうらやまれることのほとんどない仕事をしていた。
Constellation EnergyのエンタープライズセキュリティディレクターであるPetruzziは、規制当局から電子メールの記録の提出を求められた際に、責任をもって事に当たる立場の人物だ。Constellation Energyは、バルティモアに拠点を置く、125億ドル規模のユーティリティ/エネルギー卸売業者である。Petruzziはここ数年、本来は休みである週末や夜間にオフィスにこもって、電子メールサーバ上の数テラバイトに及ぶデータを徹底的に調べてきた。
「3〜6カ月の間に数百名の社員が送受信した、数百万通もの電子メールという膨大な量のデータを調査した。実に骨の折れる作業で、わたしのチームに何日間もぶっ続けで働いてもらった」(Petruzzi)
同様の不満の声が四方から上がるようになり、こうした調査の負担を軽減しようと考えているソフトウェア企業家の取り組みに拍車をかけている。Clearwell SystemsのCEOであるAaref Hilalyも、そうした企業家の1人だ。Hilalyは、弁護士や規制当局、企業幹部が電子メールを証拠や事実関係を表わす有効な存在として認めるようになった今日、イノベーションを起こす機が熟したと述べている。
2006年1月後半、カリフォルニア州サンタクララに拠点を置き、30名の従業員を抱えるClearwellは、「Clearwell Email Intelligence Platform」を公式に発表した。Hilalyによれば、同製品は何百万通の電子メールを振るいにかけ、Googleでインターネット語句検索を行うように、簡単に目当てのメッセージを探し出すものだという。
「エンロン事件が起こり、ニューヨーク州司法長官であるEliot Spitzerが登場してから、ビジネスを取り巻く環境は過去数年間で大きく変化した。裁判所は以前より積極的になり、電子メールが事実関係を示す証拠として扱われるようになっている。今では、何が起こったのか本当のところを知りたければ、電子メールを調査すればよい。そうした理由から、企業は大量の電子メールを保管して、これを参照するようにしている」とHilalyは言う。Hilalyはシリコンバレーに拠点を置く企業家で、Sequoia Capitalに任命されてClearwellを経営に当たっている。
Hilalyは2003年、自身が以前設立したソフトウェア管理企業CenterRunを、6600万ドルでSun Microsystemsに売却した。Clearwellの400万ドル相当の株式を保有するSequoia Capitalも、CenterRunに投資していた。
Clearwellの見積もりでは、法的調査のために電子メールを保管しておく作業には、一般的に1300時間に及ぶ労働と、10万ドル以上のコストがかかるという。Clearwellのソフトウェアを利用すると、こうしたコストと時間を削減できるとされている。同社はこの技術で特許を取得し、拡大しつつある同市場で主導的な地位を獲得しようともくろんでいる。
このほか、ニューヨークのOrchestriaやワシントン州ベルビューのMessageGateといった新興企業が、電子メール検索ツールを提供している。