ハードウェアのブランド変更から8カ月、IBM Systems Agendaの行方を探る - (page 2)

藤本京子(編集部)

2006-03-24 17:44

--オープンというキーワードについてはどうでしょう。

 LinuxやJavaなどのオープン技術をIBM製品に対応させることはこれまで通りですが、IBMではオープンコミュニティーにも貢献していきます。例えば、IBMの「Power」プロセッサの仕様を公開する「Power.org」を2004年に立ち上げていますし、Intelと共同開発しているブレードのアーキテクチャを2004年9月に公開し、ブレード製品向けソリューションの普及促進に取り組むためのコミュニティー「Blade.org」を2006年2月に設立しました。すでにVMwareやAMD、Symantecなど40社以上が参画しています。

 製品が標準化されることは、業界にとっても大変良いことですが、最終的にはエンドユーザーに恩恵をもたらすものです。これからも製品の仕様をオープンにすることで、業界標準化を推進していきたいと考えています。

--では3つ目のコラボレーションが意味するところは?

 日本において、引き続き顧客やパートナー企業などとのコラボレーションを続けていくことはもちろんですが、今回Systems Agendaで強調したいコラボレーションの意味は、製品の開発途中で生まれる新しい技術や部品を顧客のイノベーションに役立ててほしいという点です。

 例えば、Powerプロセッサのアーキテクチャを利用して、ソニーや東芝と共同でCellプロセッサを開発したこともコラボレーションのひとつです。サーバやストレージという最終製品にたどり着くまでの開発途中において生まれた技術を活用し、パートナーとのコラボレーションで新技術を生みだそうという考えです。

 すでにわが社には、Engineering & Technology Services(E&TS)と呼ばれるチームがあり、コラボレーションを中心としたソリューションを展開しています。このE&TSが、顧客とコラボレーションしながら、最終製品ができあがる過程で新たな製品やサービスを共同開発し、顧客のイノベーションをサポートしています。

 コラボレーションの位置づけは、Systems Agenda戦略の中ではわかりにくいかもしれませんが、IBMは2006年より顧客のイノベーションを推進するというテーマを掲げています。このイノベーションを実現するために、システムの中にあるコンポーネント技術を組み込んで使ってもらいたいという考えです。

--Systems Agenda戦略の意味は理解できましたが、IBMのハードウェア製品そのものの強みはどこにありますか?

 IBMでは、幅広い製品ラインアップをそろえていることがまず強みです。メインフレームで培った技術を下位機種にも積極的に移植した結果、高い信頼性とパフォーマンスを提供できているので、技術的なスペックで他社より勝っていると言えるでしょう。

 仮想化技術をいち早く取り入れ、乱立するUnixサーバをLinuxで統合しようというIBMの動きも、大きな成功を収めています。こうした他社製品からの置き換えを効率的に進めるため、2004年より「Zodiac」というサーバ統合のためのコンサルティングを実施しています。これは、顧客が社内にどんなサーバを抱えていて、これらをどのように置き換えると実際にどれだけのコストが削減できるかを提示するサービスです。この2年弱で、すでに80件の分析を行い、40件の置き換えを実施しました。

--なるほど。やはりシステムを全体的な視点から見ると、仮想化が一番重要なのですね。

 そうですね。仮想化によってサーバ統合が実現し、運用管理費が削減できますから。これまでのように単体のサーバにおける仮想化でも部分的に統合は可能ですが、やはりシステム全体が仮想化され、自動的に運用できることになれば、システム管理の負担が大幅に軽減されます。

 こうしたサーバ統合は、オンデマンド化実現のための第1歩なのです。最終的には、統合されたシステムの中で業務がコンポーネント化され、自由自在に組み替えられるようになることを目指しています。そうすることで、業務プロセスの変化に応じてアプリケーションやシステムもオンデマンドな対応が可能となる、これが究極のゴールですね。そのための必須条件が仮想化技術なのです。

--仮想化がオンデマンド化実現のための第1歩だとすると、この段階はSystems Agendaでほぼ実現できることになりますが、次の1歩は何なのでしょうか。

 ハードウェアの統合が実現できれば、次はアプリケーションです。アプリケーションの統合は、サービス指向アーキテクチャ(SOA)に対応することでコンポーネント化され、自由に組み替えられるようになるでしょう。

 IBMとしてのオンデマンド戦略は、ハードもソフトもコンポーネント化できるという究極の姿を目指して推進していきます。Systems Agendaは、オンデマンド戦略の中でもハードの部分を担う中期的な戦略ということです。

 現段階では、ハードウェアの仮想化やオープンなソフトウェアを採用するだけでも、顧客にとってのメリットは大きいでしょう。着手できる部分から徐々に導入してもらえるよう、これからも積極的にオンデマンド化を推進したいと思います。

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