ハードウェアのブランド変更から8カ月、IBM Systems Agendaの行方を探る

藤本京子(編集部)

2006-03-24 17:44

 2005年7月に、顧客のオンデマンドビジネスをITインフラ面で支援するという中期戦略「IBM Systems Agenda」を発表した日本IBM。この戦略を打ち出すと同時に、同社は2000年10月以来「IBM eServer」シリーズとして販売していたメインフレームやサーバ製品群の名称を「IBM System」シリーズへと変更している。

 この戦略の背景には何があるのか。Systems Agendaの意義や目的、そして現状について、日本IBM システム製品事業担当 執行役員 渡辺朱美氏に聞いた。

--Systems Agendaとは何か、まずこの戦略の基本的な定義について教えてください。

 Systems Agendaとは、顧客のオンデマンド化をITインフラ面から支援するものです。IBMはすでにオンデマンド化を支援するとしていましたが、これまでのようにサーバやストレージ、ネットワークなどを、ハードウェア単体としてとらえるのではなく、すべてをまとめてひとつのシステムととらえるのがSystems Agendaの考え方です。システムというものは、通常これらのハードウェアがすべてがつながっていますからね。

--確かにオンデマンド化は、システム全体で実施しない限りあまり意味をなしませんね。ただ、IBMではオンデマンドというキーワードを推進しはじめた時からシステム全体を視野に入れていたと思うのですが、なぜ今回製品のブランド名を変えてまでこの戦略を打ち出したのでしょうか。

Systems Agendaについて説明する日本IBM システム製品事業担当 執行役員 渡辺朱美氏

 これまでのオンデマンド環境というのは、主に製品単体の仮想化技術にとどまっていました。Systems Agendaはオンデマンド戦略の一環ですが、製品単体ではなくシステム全体の仮想化を進めようという意味をふまえています。また、今後5年間の中長期的な視点で取り組むことを示すため、新たなブランド名を打ち出しました。

 これまでのシステムは、全体的な視点からではなく、必要に応じて部分的に構築されてきました。その結果、顧客のシステム環境は複雑になり、どんなサーバがどこにどれだけあるか把握しきれない状況になっています。サーバなどのハードウェアはコモディティ化し、低価格化が進んでいますが、運用管理費は膨らむ一方です。ある調査によると、運用コストはすでに2001年にハードウェアのコストを上回り、今後も増え続けるとされています。Systems Agendaは、複雑化してしまったシステムの課題をどう解決するかという観点から生まれました。

--ブランド名を変更したことで、顧客の混乱は避けられないと思いますが、新ブランドはスムーズに顧客に受け入れらていますか。

 eServerブランドがすでに浸透している中でのブランド名の変更は確かに大変ですが、セミナーや講演はもちろん、直接顧客に説明するなどして新ブランドのマーケティング活動を行っています。

 ただ、実際に製品そのものに大きな変更はありませんし、製品名が大幅に変更されたASシリーズからeServerシリーズへの移行時に比べれば、それほど混乱はありません。今IBMが顧客に訴えかけていかなくてはならない点は、Systems Agendaをベースとした製品が「バーチャライゼーション」(仮想化)「オープン」「コラボレーション」という3つの柱に基づいた製品であるというコンセプトを理解してもらうことです。

--Systems Agendaでは、なぜこの3つの柱が必要となるのでしょうか。ひとつひとつのキーワードの意義を説明してください。

 まず、仮想化はこの戦略の一番の柱となります。IBMは、メインフレームにおいては40年ほど前から仮想化を実装するなど、単体の仮想化においては長い歴史があります。ソフトウェアの仮想化技術はもちろん、ハードウェアを論理的に分割するLPAR(Logical Partitioning)という仮想化技術を昔からメインフレームに実装しています。この仮想化技術を、10年前よりビジネスサーバのiSeriesやUnixサーバのpSeriesに移植しました。

 今回システム全体の仮想化を実現するにあたっては、「Virtualization Engine 2.0」というソフトウェアを採用しています。このソフトウェアを利用すれば、異機種が混在した環境でも、サーバ群やネットワークなどが1つのシステムとして見えるようになり、リソースが不足している部分に自動的に資源を割り当てることができます。Virtualization Engineで管理できるサーバは、他社サーバも含まれますからね。

 IBMのサーバがこのVirtualization Engineに対応したタイミングで、名称をこれまでのIBM eServerシリーズからIBM Systemシリーズへと変更しました。現時点ではxSeriesのみが旧名称のまま残っていますが、Systems Agendaを打ち出して以来新しく発表したサーバはすべてVirtualization Engineに対応しています。

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