メインフレームのDNA

三木良雄(日立製作所) 2006年03月29日 13時07分

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 本連載もいよいよ最終回となってしまった。新しい記事が発行される度に、一種懐かしい思い出のページを読者の皆様にも開いていただけたことと思う。しかし、本連載のテーマであるメインフレームの進化論に立ち返ったとき、メインフレームを過去のものとして終わらせてしまってよいのだろうか。今回は、この進化論について触れてみたいと思う。

メインフレームは恐竜?

 進化論と言えばもちろんダーウィンの進化論であるが、その進化系列の中でメインフレームは死に絶えた恐竜なのだろうか?

 一般には、メインフレームはネットワークで接続された端末を介して利用する集中型の汎用大型計算機であり、1980年頃から現れたワークステーションやパーソナルコンピュータ(PC)などの分散型の計算機に取って代わられたように説明されていることが多い。しかし、他の記事でも触れられているように、現在でも社会的基幹業務ではメインフレームは重要な役割を果たしている。つまり、メインフレームはそれ自身が計算機の高度な発展形であり、ワークステーションやPCは進化論的樹形図で言うならば、途中から派生してきた新種である(図1)。

図1 計算機システムの進化

 では、その高度進化形とはどんな姿をしているのだろうか。最近では、新種のPCやサーバのイメージが広く浸透しており、それらをリファレンスにメインフレームをイメージすることが多いように思えるが、頭は? 胴体は? 手足は? 今一度振り返ってみたい。

メインフレームはそれ自身が計算機システム

プロセッサ
 計算機である以上プロセッサが搭載されていることは当然であるが、メインフレームの場合、アプリケーションプログラムを実行するプロセッサを命令プロセッサと呼んでいる。実はこの他にも、データの暗号化/復号化を専用に実行する内蔵暗号化機構、同様にデータの圧縮伸長処理を行うデータ圧縮機構などの多数の処理機構(プロセッサ)が協調して一つの情報処理装置を構成している。

高速接続
 メインフレームではチャネルと呼ばれる接続機構を介して周辺装置との接続を行う。たとえば、ディスクアレイサブシステムとの高速なデータ転送を行うFIBARCチャネル。遠隔地に設置した周辺装置との接続を可能とするACONARCチャネルなどがそうである。また、これらのチャネルやLANアダプタは入出力プロセッサ(IOP)で制御されており、ここでもまた、複数の処理機構の協調により一つのシステムを実現する姿が見える。

RAS機構
 本連載の信頼性に関する回でも述べられているように、メインフレームの重要な特徴に高信頼性がある。各所のエラー検出や訂正機能、また、電源、ファンなどあらゆる部品の冗長化構成と稼動時保守、障害時の自動切換えなどにより、止まらないシステムを実現している。

システムの柔軟性
 キャパシティオンデマンドは業務量の急激な拡大に対応して稼動中に上位モデルへの移行やメモリーの増設を可能とする。また、高度な仮想化技術により、1台のプロセッサシステムで複数のOSを稼動させたり(PRMF)、各OSが管理するチャネル、入出力装置などのシステム構成情報を稼動中に変更(DRF)し、周辺装置の増設、変更がシステムを停止させることなく実現する。

運用管理機能
 上で述べたような複雑なシステムの電源投入から立ち上げ、自動停止を業務のスケジュールに沿ったシナリオに基づいて自動運転。また、ハードウェアやソフトウェアの監視、操作を一つのコンソール上に集約し一元管理を可能とする。

 このように、多重化された大きな頭脳に太い手足、さらに体の随所に小さな頭脳が分散してるうえに全体が調和して自律性を持つように、しっかりした神経系を備えた身体が一つの骨格(フレーム)に収まっている。どうも、そのような姿が計算機の高度進化形としてのメインフレーム像のようである。

 進化の主要目的の一つに環境への適用がある。では、どんな目的や環境に対応しようとして、そのような姿に進化したのであろうか?

メインフレームが棲む環境

 メインフレームが棲むのは空中・陸上・水中なのか? 今まで繰り返し述べてきたように、企業経営上の事務計算や、科学技術計算など、社会活動の根幹を支えるミッションクリティカル用途にメインフレームは使われ、その環境に適応すべく進化してきた。さしずめ、古代の世界観における天空を支える亀や象といったところかもしれない。その“支える”ことの重要性や進化環境としての意味をもう少し掘り下げてみたい。

WORKとJOB

 仕事を表す言葉にWORKとJOBとがある。普段はあまり区別なく用いることが多いが、微妙にニュアンスが異なるようである。WORKは身体や機械を動かして行う、いわゆる労働一般を表す。そのためか不可算名詞である。一方、JOBは可算名詞であり、具体的な仕事の単位や内容が明確であり、対価を頂戴する単位や責務が明確な仕事と考えられる。つまり、一般に日本語で「業務」と呼んでいるものがJOBに該当する仕事である。

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