SAP ジャパンは10月5日、“エンタープライズSOAの価値と実践を体感する2日間”をテーマとしたカンファレンス「SAP TechEd '06 Tokyo」を開催した。基調講演には、SAP AGのインダストリ ソリューション ゼネラルマネージャーであるJim Snabe氏が登場。「新たなる企業の挑戦に向けて--エンタープライズSOAが創りだす戦略的資産」と題した講演を行った。
Snabe氏は、SAP TechEd開催の意義を「SAPとユーザー、そしてユーザー同士の対話の場を提供することだ。対話こそがイノベーションを生み出す」と言う。ユーザーとの対話で、常に問われることを同氏は、「SAPの製品を導入するためにユーザー企業が変化すべきなのか、またはユーザー企業に合わせてSAPが変化すべきなのかということだ」と話す。
「以前であれば“SAPに合わせて変化してみてはどうですか?”と話していたが、現在は“場合によって変化させるものは違ってくる”と答えている」とSnabe氏。IT化する部分が「企業にとって競争力とはならない部分についてはベストプラクティスを採用し、競争力になる部分についてはコアコンピタンスを貫くべき」というのがSnabe氏の主張だ。
つまり、ベースとなるITインフラについては共通の基盤を採用し、その上で稼働するサービスについてはコンポジットアプリケーションとして構築し、変化に合わせて柔軟に組み合わせる。これこそが、SAPが提唱する「エンタープライズSOA」が目指す方向性といえる。
エンタープライズSOAは、は、SAPの統合プラットフォームである「SAP NetWeaver」を中核に、SAPのERPはもちろん、既存のアプリケーションやJavaなどで開発した新しいアプリケーションなどを柔軟に統合し、新しいビジネスプロセスとして運用を可能にする同社の新しいテクノロジ戦略。SAP NetWeaverと「mySAP ERP 2005」による基盤の上に、拡張パッケージを組み合わせることで実現される。
Snabe氏は、エンタープライズSOAの具体的な実現方法を家の建築に例えて紹介。「ビジネスにおけるITの戦略的活用では、まず基盤を確立し、基幹の最新化、ビジネス利用の最適化、戦略的差別化の推進と、家を構築するようにステップアップしていくことが重要。変化することのない強固な基盤を構築し、その上に柔軟に間取りを変更できる部屋を作るようなITシステム構築が必要になる」と話した。
その一方でユーザー企業は、「基盤部分のソフトウェアは5年に1度程度のアップデートにしたいが、ビジネスのイノベーションは四半期ごとにしたいというギャップも抱えている」とSnabe氏。このジレンマを解消するためにSAPでは、mySAP ERP 2005はコア機能として位置づけ、2005年〜2010年の期間は機能拡張を行わず、拡張パッケージによりイノベーションを実現するという、新しい製品リリース戦略を発表している。
このエンタープライズSOAをいち早く体験してもらうことを目的に、SAP ジャパンは日本ヒューレット・パッカード(日本HP)と協業。必要なソフトウェアを搭載し、事前に設定を施すことで箱から出してすぐに使えるエンタープライズSOAボックスといえる「Discovery System」を日本HPから提供することも発表した。
ビデオで登場した日本HPの代表取締役社長、小田晋吾氏は、「日本HPとSAP ジャパンは、すでに16年以上の協力関係にある。今回、両社が協力することでDiscovery Systemを提供することで、低価格かつ短期間でエンタープライズSOAを実現できる環境を提供することが可能になる」と話している。
Snabe氏は、「次に顧客企業からは、エンタープライズSOAをいつから始めればよいのか、と聞かれるだろう。答えは簡単だ。今すぐ始めましょうと答える。必要なものは、すでにそろっている。SAPの基盤の上に構築されたエコシステムを今すぐに実感してほしい」と話し、講演を終えた。