万川集海 第9回:エステティシャンがデータを救う--テープリカバリサービスのお話

大谷健治(日本IBM) 2007年03月15日 08時00分

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テープがエステに通うとき

 テープはCDやUSBメモリなどと同様、取り外しが可能なメディアである。これらはリムーバブルメディアと呼ばれている。今日のコンピュータの世界では、主にデータバックアップ用途や保管用途で使用される場合が多い。保管データは言うに及ばず、バックアップといえども大切なデータであることは言うまでもない。

 皆さんも録画したビデオがうまく撮れていなかったり、撮影したカメラの写真がダメになっていたりしたら、さぞや落胆されることであろう。そんな悲しい出来事が起こらないよう、テープ自身も信頼性向上のためさまざまな工夫がなされている。

 例えば最新のテープ装置では、データを書き込む時に工夫を凝らし、テープの走行方向に対して垂直方向や水平方向に折れやキズが発生しても、データが読めるようになっている。大敵である埃がテープに付着しないようにするための機構もある。カートリッジメディアも高い耐久性を実現するため、摩擦による損傷が少なく、環境の変化に強く安定性の高いメディアが提供されている。

 しかし、これだけ技術が進歩しても不幸な出来事は残念ながら起こってしまう。データがどうしても読めない状況が発生してしまうことがあるのだ。保管状況が悪く、ごみがテープの表面に付着してしまったり、巻取り中の事故でシワが付いてしまったり、テープがたるんだ状態で読み書きしてしまい、折れが発生して読めなくなったりすることがある。一番悲しいのがテープ切れだ。

 このように、物理的なダメージを受けたテープを何とかして読めるようにするサービスがある。今日はこのお話を紹介したい。テープがエステに通うのだ。そう、テープも埃や傷を治して綺麗になりたいと願っているのである。

肌を傷つけることなく優しくケア

 エステに通う目的といえば、「痩身」がすぐに頭に思い浮かぶだろう。「痩身」と同様に、「脱毛」「美顔」も大きな要素となるようだ。テープは太っていることを気にしたりはしないが、「脱毛」「美顔」といったエステが、テープのデータリカバリにおいても行われているのだ。

 テープ表面に付いたごみを取り除くことは「脱毛」に、しわや折れを取り除いて表面を綺麗にすることは「美顔」に、それぞれ例えることができる。どんな風にエステを行うかというと、ごみが付着してデータが読めなくなった付近を、手動でテープを巻き取りつつ、顕微鏡を使ってごみを確認していく。中には、走行方向に対して垂直方向に1つの白い線となってごみが付着しているものを発見することがある。これは、テープ上についた埃がテープの走行によって一箇所に固められたものと考えられている。

 見つけられたごみは、特殊な薬品を使ってこすり落とされる。テープに適切な薬品を使用することで、テープ上に傷を作ることはない。テープ上に広範囲でごみが付着していることが確認された場合は、ひとつひとつ取り除くのではなく、全体に対して処置を行う。その際は、特殊なグローブを手にし、テープを走行させた状態でテープ表面に手を添える。すると、グローブがごみを取っていく。もちろんテープを傷つけることはない。テープのエステティシャンは読み取り可能になるまで地道にごみを取っていく。そして、最終的には全てのごみが取られ、普通にデータの読み取りが可能となるわけだ。

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