“ミッションクリティカル”と“SaaS”の両面からOSS利用を促進--日本ユニシス - (page 3)

岡崎勝己(ロビンソン)

2007-03-19 01:18

共有できるテストベッドが不可欠

 OSSはIT業界に新たなビジネスチャンスをもたらす可能性を秘めている。例えば、半導体ビジネスでは、さまざまなタイプのMPUの上でLinuxが稼働することから、IA(Intel Architecture)に対する新たな競争の機会が芽生える。

 「ハードウェアからソフトウェアまで、OSSの普及によって幅広い領域で競争が行われるでしょう。それだけ多くのチャンスが新たに生まれるのです」(保科氏)

 ただし、今後のOSSの利用促進に向け、不安要素も少なくない。そのひとつとして保科氏が危惧しているのが、国内のLinuxの普及に向けた危機感の薄さだ。例えば、2006年11月に開催された北東アジアOSS推進フォーラムの第5回全体会議では、中国と韓国がLinuxの開発に共同で取り組むことを発表される一方で、日本はその仕様を評価するにとどまった。

 「ビジネスが発展する上で、“協調と競争”は欠くことができません。しかし、共有できるテストベッドという“協調”がないために、国内では“競争”が始まりにくい状況にあります。国際競争力の観点からも、日本でも早急にテストベッドのあり方について議論をすべきでしょう」(保科氏)

 保科氏によると、OSSの活用に向けた基礎研究が大学をはじめとした研究機関で行われ、自治体などでそれらの成果を生かしたプロジェクトが進められるといった“好循環”が中国や韓国などでは生まれているという。そうした活動の展開が、OSS市場の拡大に不可欠というのが保科氏の考えだ。

 「OSSの活用を加速させるためには、OSSを活用した協調路線は極めて大きな意味を持っています。OSS推進フォーラムがそのために果たす役割は、非常に大きなものなのです」(保科氏)

 基礎研究の成果をOSSで公開することは、産学官連携に効果的である。研究成果をオープンにすることで、研究者のモチベーションを高く保てるうえ、企業との共同研究によって成果をビジネスに活用することも容易に行うことができる。

 ともあれ、OSSの普及を促進するためには、利用者側とOSSをビジネスに取り込んだ提供側の双方にメリットがある新たなビジネスモデルを早急に確立することが不可欠だ。日本ユニシスではその実現を目指し、大学をはじめとするさまざまな研究機関と共同で、技術とビジネス双方の面からOSSの発展を支援していく考えだ。

日本ユニシスの保科氏 日本ユニシス 最高技術責任者、保科剛氏。

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