マイクロソフトは4月17日、人々、データ、さまざまなシステムをつなぐことで、円滑な組織内および組織間の連携を実現する「相互運用性(Interoperability)」に関する同社の取り組みを紹介するプレス向けの説明会を開催した。
マイクロソフトの代表執行役社長であるDarren Huston氏は、「相互運用性の取り組みは、マイクロソフトの戦略そのものといえる。Windowsでは、PCとプリンタ、デジタルカメラなど、さまざまな周辺機器との相互運用性が必要だった。相互運用性を確立できなければ、我々のビジネスは成り立たない」と言う。
相互運用性の重要性をHuston氏は、さらに消費者、企業顧客、政府、ICT(Information and Communication Technology)産業の4つの分野で紹介した。
まず消費者にとっては、製品選択の幅が広がると共に利便性が向上する。また、技術や製品の利用期間を長期化することが可能になる。Huston氏は、「6つの家電製品を6つのリモコンで操作できるのはあたりまえのこと。1つのリモコンで操作したいと考えるのが一般的であり、これを実現するのが相互運用性だ」と話す。
また企業顧客にとっては、ソリューションの選択が柔軟になり、基本的要件が確立できることから投資の削減につながる。ICT産業にとっては、顧客価値を向上すると共に、市場の創造と拡大、コスト管理が期待できる。そのほか政府にとっては、技術革新や産業振興の機会を拡大し、電子政府の推進や社会的、政治的、経済的に良い影響を与えることができるとしている。
「(マイクロソフトは)ときどき失敗もあるが(笑)、決して閉鎖的な会社ではない。相互運用性の重要性については、十分に理解している」(Huston氏)
次に登場したMicrosoft International社長でMicrosoftのシニアバイスプレジデントでもあるJean-Philippe Courtois氏は、「データとシステムの相互運用性はシンプル。テクノロジが解決してくれる。難しいのは、人と人のつながり。文化や言語、法律などさまざまな障壁があるためだ」と話す。
こうした障壁を取り除くためにマイクロソフトでは、設計段階からの相互運用性確立に向けた取り組みを展開している。具体的には、まず製品設計においてマイクロソフト製品との相互運用性を実現するための技術を提供。PCと周辺機器がシームレスにつながる環境を実現する。
また、顧客やパートナー企業、競合他社の声を聞き、協調や共存のための場を提供。さらに、同社の技術に自由にアクセスできる「Open Specification Promise(OSP)」プログラムに基づき、事業やコミュニティを実現し、その成果をISOやIEEE、IETFなどの標準化団体に公開することで相互運用性の確立を支援している。
Courtois氏は、「相互運用性の確立には3つの側面がある。原則として、(1)コンピュータメーカーや顧客のための選択肢を提供すること、(2)開発者への機会を提供すること、(3)ユーザーのための相互運用性であることの3つだ」と話している。
日本市場における相互運用性確立の取り組みとしては、マイクロソフトの最高技術責任者(CTO)である加治佐俊一氏が、文字コード、ネットワーク、ハードウェア、文書フォーマットを例に紹介した。
特に文字コードについて加治佐氏は、「JIS78からはじまり、Shift-JIS、ISO/IEC10646、JIS2004と標準化が行われている。先進国において文字コードの標準化をいまだに行っている国は珍しい。国際競争力の向上からも早期の標準化が不可欠になる」と話す。
同氏はまた、日本語の課題として「外字の取り扱いとデータ交換/移行などの問題を解決することが必要。(日本語には、ひとつの文字集合に対し、複数の符号化がある)安定した符号化文字集合の実現が相互運用性の基礎となる」と話している。
そのほかネットワークに関しては、Windows VistaでIPv6をサポートしたこと、ハードウェアでは同じくWindows Vistaで認定された1万種類のデバイスの内、約24%が日本製であること、文書フォーマットではXMLに基づき、標準化団体であるEcmaが承認する「Office Open XML」規格などで相互運用性を推進していくことなどが紹介された。
加治佐氏は、「オープンな標準が、企業や政府、ユーザーなどのエコシステムを育てていく。このエコシステム全体をカバーする相互運用性の普及と促進を目指していく」と話している