熱と電力を低くする技術
今回のブレードサーバの開発でHPが最も力を入れた分野は、熱の発生と電力消費への対応だ。自ら部品メーカーと協力して専用の廃熱ファンを開発したのも、その表れの1つだ。最高毎分2万回転の性能をもち、熱排出能力が高いだけでなく、同一冷却性能ファンと比較して66%の消費電力軽減、50%の騒音抑止を実現している。この進化した冷却ファンの開発で、業界最高密度の実装が可能になった。
「電力消費量を下げるのは簡単で、性能を落とせばいい。しかし、それではなんの進化もない。HPでは単位あたりの電力で最高性能が出るように工夫をしている」(山中氏)
例えば、負荷が低く消費電力が小さいときは、電源装置を1台停止させる。あるいは、BIOSレベルでクロック周波数を下げる機能を実装している。CPUクロックの変更はOSレベルで対応するものはこれまでもあったが、BIOSで対応し消費電力の削減に取り組んでいる例はないという。負荷状況に合わせ電力消費を調整する方法で、欲しいときには最大性能を発揮できるため、利用者に性能の劣化を感させることなく低消費電力を実現する。実際、ラック型のサーバ構成と同じスペックを準備するならば、ブレードに移行するだけでも11%の電力削減が可能だという。
また、ブレードのイメージは、熱発生や電力消費が大きいことに加え、「重い」と思われがちだが、実際にはそうでもないと山中氏は主張する。もちろんエンクロージャの分だけ重量は増えるが、ラック型を積み重ねて同等性能を発揮させる構成では、「数が増えればむしろブレードサーバのほうが軽くなる」と山中氏。こういった第3世代ブレードサーバの特長を生かすべく、HPはデータセンターのファシリティアセスメントのサービスも提供しており、熱や電力消費、性能のバランスをとりながら、効率のいい構成を提案している。
SuperdomeもBladeSystem c-Classも思想は同じ
2007年3月に、HPはIntegrityブレードサーバを発表した。これにより、データベースなどのミッションクリティカルな要求にもブレードサーバが活用できるようになった。しかしながら、ミッションクリティカルならば1台のサーバで済むのだから、管理性からは同社のSuperdomeのほうがいいのではという疑問も出てくる。
この点に関し、HP エンタープライズ ストレージ・サーバ統括本部 ビジネスクリティカルサーバ製品本部 サーバプロダクトマーケティング部 部長の森成隆氏は、「何でもいいからSuperdomeというのでは、やはりコスト的に合わない場合もある。Superdomeはスケールアップで最初から高負荷の要求を前提とし、ブレードサーバならばスケールアウト型で徐々に拡張できるメリットがある。とはいえ、両者のコンセプトは似ている。Superdomeも内部的には仮想化でリソースを分割しサーバの統合に利用されている」と話す。
つまり、Superdomeも見方を変えれば構造的にはブレードサーバと同じということだ。加えて森氏は、「仮想化によってリソースを分割し、自動化で有効活用する技術の方向性は、将来的には双方が歩み寄り垣根が取り払われ新たなシステムの形に行き着くのでは」とも予測する。
HPの目標は
HP エンタープライズ ストレージ・サーバ統括本部 インダストリー スタンダード サーバ製品本部 ブレード・バリュープロダクトマーケティング部 担当部長の正田三四郎氏は、HPの目標について、「2007年中に世界のすべての地域でナンバーワンのシェアを獲得すること。日本やアジア地域には強いローカルベンダーもいるので、過半数獲得は難しい面もある。日本では、昨年30%の成長があった。今年は昨年実績の2倍が目標だ」としている。
Integrityブレード提供による適用範囲の拡大や、前述のバーチャルコネクト機能や管理性を向上させる自動化ソフトウェアの提供など、より高い統合度が実現できるBladeSystem c-Classで、この高い目標も達成できると同氏は自信をのぞかせる。
HPでは、第3世代ブレードの性能向上だけでなく、製品を扱う専任部隊の強化やパートナー企業への支援、広告などによる認知度の向上を実施し、ブレードへの関心の高まりをブームで終わらせないよう努力している。ブレードはノートPCレベルのハードウェアを高密度に集めたものというイメージから早く脱し、ユーザーがブレードの新たなメリットを真に理解すれば、他社に先行するHPの第3世代ブレードは市場で確実にシェアを獲得することになるのかもしれない。