今年も新生活の疲労を癒す幸せなひととき「ゴールデンウィーク」が終わり、現実の世界へ戻ってきた。社会人8年目になろうというのに、私はいつになってもこの夢が終わる瞬間を直視できない。中堅クラスに差し掛かる私でもこうなので、今年社会人になったばかりの新入社員の方々気持ちは容易に想像できる。しかし、数カ月後には夏休み! 気持ちを切り替えて頑張ろう。
さて、新連載「ネットワークのイロハ」では、隔週で6回(多分?)に渡ってネットワークの「基礎」についてお話しする。ウェブや雑誌などでネットワークについて書かれている書物は沢山あるが、「超」難しいか、「超」簡単かの二分に分かれる。しかも、普段忙しい生活を送っている皆さんだから、なかなか腰を据えて超基礎からはじめられる時間もないだろう。この連載では、ネットワークの基礎となるポイントを押さえ、ネットワーク業界にいなくてもある程度ネットワークが理解でき、(多少)語れるレベルまでもっていくことを目標にしたいと思う。
では早速はじめよう。
ネットワークの会話の仕方
皆さんは「ネットワーク」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。電話、インターネット、LAN、WAN……。文字通り「ネットワーク」とは「通信」であり、データや音声を伝えるものだ。つまり相手と相手を結ぶものである。
では、伝えるためには何が必要か。言葉や、言葉を伝えるための文字が必要である。しかしながら、同じ言葉や文字を知っていても互いに理解出来るものでなければ伝わらない。良く使われる例えだが、会話をするAさん、Bさんがそれぞれ日本語、フランス語しか分からなければ、当然会話は成り立たない。つまり「通信」できないのだ。
ではどうすれば良いのか。簡単なことだが、お互いが分かる言語で話せばよい。それがネットワーク用語でいう「プロトコル」なのである。プロトコルは、例えば英語のように世界共通言語的な扱いの標準プロトコルと、地方や地域の特有言語、方言のような独自プロトコル(ベンダー独自プロトコルなど)があるので注意していただきたい。ちなみに標準プロトコルは、IETF(Internet Engineering Task Force)という国際機関で議論され、RFC(Request For Comment)というドキュメントに記載されており、インターネット上で閲覧できる。よく見かけると思うが、製品カタログのスペック欄に記載されている「RFC793」(TCPの番号)といったような表記は、このドキュメントでの番号を指している。
さて、プロトコルのイメージについて簡単に説明したが、もう少し掘り下げてみよう。先ほどのAさんとBさんの会話の続きで、おしゃべり(通信)をフェイス ツー フェイスで行う場合は、共通言語である英語(プロトコル)だけを気にすれば良いのだが、距離が離れていたらどうすれば良いか。当然、おしゃべり(通話)するための手段(ツール)が必要となる。しかもその手段は、お互い合わせる必要がある。
例えばAさんが電話で、Bさんがトランシーバーだとおしゃべり(通信)は出来ない。お互いの機器に互換性がないので、いくら共通言語を話しても伝わらないのだ。このように、遠距離通信をする際には、様々な条件を合わせる必要があり、どれか1つでも欠けると通信自体できなくなってしまうのだ。こういうと難しそうに聞こえるが、裏を返すとお互い項目ごとに合わせさえすれば、通信は確実にできるのである。