監査法人トーマツは5月23日、デロイト トウシュ トーマツ(DTT)が実施した、「2007年テクノロジーFast500グローバルCEO調査」のレポートを発表した。
調査は、テクノロジー業界を対象とした企業ランキングである「2006年デロイト テクノロジーFast500」を受賞したアジア太平洋地域、北米地域、EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域の急成長テクノロジー企業のCEO(最高経営責任者)を対象に、DTTのTMT(Technology, Media, Telecommunications)グループが実施した各地域CEO調査を、2006年第4四半期に集計したもの。回答を得ることができたCEOは546人で、アジア太平洋地域の受賞企業からは207社のCEOから回答を得ている。
調査レポートによれば、世界のテクノロジー業界は今後も高い成長に自信をのぞかせながらも、人材危機を迎えていることが明らかになった。ベビーブーム世代が定年を迎える中、世界のCEOは慢性的な人材不足を最大の懸念の一つに挙げている。
一方で、回答者の過半数が自社の労働力を25%超拡大する予定と回答。大多数はアウトソーシング等ではなく、自社内部からの成長を望んでおり、優秀な人材の雇用と定着が各社共通の最大の課題とみられる。
人材不足に対する懸念は、CEOとしての個人的課題は何かという質問に対し「次世代リーダーの育成」が上位に挙がるなど、本調査のさまざまな質問への回答に反映されている。回答者の多くは自国での教育制度に懸念を示しており、特にアジア太平洋地域では、20%があまり成功していないと回答している(北米2%、EMEA8%)。オフショアリングに対する見方も変化しており、労働コスト削減として活用するのではなく、国内では確保できない人材の貴重な供給源としても捉えられている。
また、今後12カ月間に起きる可能性の高い出来事は何かという質問に対しては、いずれの地域でも、自社の「内部的成長」を通じて意欲的な成長目標を達成していくとの回答がもっとも多かった。アジア太平洋地域では、買収取引(20%)と新規株式公開(17%)の2つが他地域よりも高く、この考え方は、まもなく米国(15%、6%)やEMEA地域(13%、4%)にも広がっていくものと見られる。
急成長テクノロジー企業のリーダーにとって最も重要なスキルについては、アジア太平洋地域の企業では「適切な意思決定」と回答する割合が38%(北米24%、EMEA 23%)と高かった。その他、「コアコンピタンスへの注力」と「グローバルな思考」も重視されている。
海外の人材の必要性については、45%が自社の成長のためには海外の人材が「必要不可欠である」もしくは「かなり重要である」としている。特にアジア太平洋地域のCEOは海外の人材を重要視しており、半数以上(55%)が同様の回答をしている。レポートでは、この調査結果を自国の教育制度に対する自信の欠如に由来するものではないかと見ている。
今後5年間にオフショアリングする人員の割合について、大多数の企業は自社のグローバルでの従業員のうち、少なくとも10%をオフショアリングすると予想している。また、アジア太平洋地域では、回答した17%の企業が全従業員の40%をオフショアリングすると予想しており、他地域よりも高い結果となっている。
今後12カ月でもっとも成長性の見込めるテクノロジー業界の分野については、3地域すべてにおいて、「インターネット/IP関連」が挙げられている。アジア太平洋地域では、これに続いて「半導体/部品/電子機器」が突出している。