運用の負荷が課題?--VoIP導入までの4つの障壁を考える - (page 2)

文:Deb Shinder 翻訳校正:吉井美有 2007年05月29日 08時00分

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 また、信頼性に関してはもう1つの側面も存在している。建物に設置されている通常の電話用ジャックは、電力なしでも動作する(ただしPBXなどの機器は電力がなければ動作しない)。これはつまり、従来の電話であれば停電になっても電話サービスを使い続けられるということを意味している。

 VoIPが動作するには電力とインターネットサービスの双方が不可欠である。このため、これら2つのいずれかに障害が発生すると、電話サービスは利用不可能となる。予備のインターネット接続と、発電機のようなバックアップ電源を用意しておくことでこの問題に対処することができるものの、これによってVoIPのコストが増加することになる。

サービスのネットワーク品質

 VoIPはデータ通信よりもはるかにネットワーク「障害」に弱い。ネットワークはデータパケットの欠落が発生するとそれらのパケットを再送する。パケットの欠落によって電子メールが数分遅延しても、ユーザーはおそらく気付かないだろう。

 しかし、送信の遅延やパケットの欠落が原因で電話での通話に不具合が発生した場合、通話者は必ずそれに気付き、苦情を言うだろう。通話はリアルタイムの通信であるため、データ送信プロセスはより透明度が高い、つまり問題はユーザーの「鼻先に突きつけられる」ことになる。

 IPネットワークは以下を始めとするさまざまな変動要素の影響を受ける。

  • ネットワークの混雑やデータの破損を原因とするパケットの欠落
  • パケット伝達の遅延量の変動。これは音声品質の低下を招く場合がある
  • パケット到着順序の乱れ。これによって廃棄パケットが発生し、さらに遅延や中断が引き起こされる場合がある

 また、アナログからデジタルへの変換プロセスもVoIP通話の品質に影響を与えることがあり、その場合にはユーザーにとって不愉快な音声の歪みやエコーが発生することもある。さらに、信号レベルの問題も通話品質に影響を与えることがあり、その場合には大きな雑音が発生して会話の妨げとなることもある。

 こういった問題の発生を防ぐためには、管理者がVoIPパケットの優先順位を上げられるようにするQoS(Quality of Service)メカニズムがIPネットワークでサポートされている必要がある。これはつまり、VoIPネットワークはデータネットワークよりも管理が難しく、ネットワーク管理者により高い、もしくは少なくとも特別なスキルセットが要求されるということを意味している。

 VoIPの監視や管理を行い、音声サービスの最適化を容易にするソリューションが提供されているものの、それによってVoIPの配備コストが上昇することになる。また、そもそもVoIPに移行する動機であるコスト削減効果が一部損なわれることになる。

複雑さと紛らわしさ

 多くの企業にとっては、VoIP通話は複雑で馴染みがないという点も障壁となっている。データネットワークの運用に精通しているネットワーク管理者でも、VoIPの仕組みや必要な機器類、そういった機器類の設定やメンテナンスについてはあまり詳しく知らないかもしれない。

 また、VoIPに関する用語はメディアゲートウェイやアナログ電話用アダプタ(ATA:Analog Telephone Adapter)、音声応答装置(ARU:Audio Response Unit)、音声自動応答装置(IVR:Interactive Voice Response)など、分かりにくいものが多い。また、企業のマネージャーやIT担当者はH.323やSIP(Session Initiation Protocol)、IAX(Inter-Asterisk eXchange)といったさまざまなVoIPプロトコルを耳にするものの、その違いや、自社にとってどれが必要かといったことについてはあまり理解していない。

 すでに重い業務負担を抱えているIT担当者らは、新たな専門知識を1から学ぶという仕事に取り組んだり、VoIPシステムのコンポーネントをメンテナンスし続けるという業務を新たに引き受けたりすることに対して乗り気ではないかもしれない。また、彼らはVoIPネットワークと既存のデータネットワークをどう統合したらよいかに自信を持てないかもしれない。

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