米調査会社のForrester Researchが、北米と欧州において、企業の環境問題対策についての調査を実施した。同社が環境分野での調査を行ったのは今回が初めてとなる。
この調査を担当したのは、Forrester Researchのシニアバイスプレジデント Christopher Mines氏だ。同氏は、「環境対策は新しい分野だが、多くの企業が興味を持っている。企業は、CSR(企業の社会的責任)という観点はもちろん、ブランド力をつけるため、またコンプライアンス対策におけるリスク回避などを視野に、環境問題に取り組もうとしている」と述べる。
調査対象となったのは、ITベンダー12社とユーザー企業124社。ベンダー企業は、Advanced Micro Devices(AMD)、American Power Conversion(APC)、Cisco Systems、Dell、EMC、Hewlett-Packard(HP)、IBM、Intel、Sun Microsystemsなどで、主にストレージやサーバなど、データセンターで使われる機器の大手ベンダーとして業界全体に対する影響が大きい企業が選ばれた。
環境問題に対する取り組みは各社さまざまだ。IBMでは低消費電力・冷却テクノロジーを駆使した製品を提供すべく「CoolBlue」システムを提案しているほか、5月には新たなデータセンターのエネルギー効率化プロジェクトとして「Big Green」を発表している。また、DellやSun Microsystems、HPなども、顧客の省電力化を支援するためのプログラムやサービスを用意している。
顧客に対する働きかけだけではない。Mines氏によると、「多くのITベンダーが自社製品の製造やリサイクルの過程、さらには社内業務において、よりエネルギー効率を上げる方法を模索している」という。IntelのCIOがエネルギーの効率化を2007年の最優先事項のひとつとして挙げているほか、HPでは社内で利用しているPCモニターが省電力設定になっているかどうか調査するなどしている。
また、Dellでは製品のパッケージをプラスチックからリサイクルしやすい段ボールや木に変更したほか、梱包そのものを簡素化する取り組みを進めている。また、できるだけ顧客の多い場所の近くに工場を移転させ、輸送効率を高めようとしている。
製造工程やサプライチェーンを改善したいと考える企業は多いものの、「この分野は一番難しい」とMines氏は指摘する。それは、部品の供給元などパートナー企業の取り組みにも関わることや、製造工程をそう簡単に変更することは困難だからだ。それでも、Intelの最新工場ではこれまでの工場より水やエネルギーの使用料を抑える仕組みになっており、AMDがテキサスに設立した新工場では100%再生可能なエネルギーを利用しているという。
一方、ユーザー企業にとっては、環境対策で実利益が見えなければ取り組みが進まないのも事実だ。今回の調査で「システム購入の際に、ベンダーのエネルギー効率化の取り組みが購入判断を左右することがあるか」との問いに「はい」と答えたユーザー企業は、欧州では33%、北米では22%という低い数字だった。
ただしMines氏は、「この数字は1年後には倍増するだろう」と見ている。ベンダーがエネルギー効率の良さを製品の売りとしてアピールするなど、製造過程の効率化といった内部的な取り組みに加え、外部に対するアプローチも積極的に進めているからだ。
Mines氏にどの企業の取り組みを評価するかと聞くと、「今回はそうした評価基準は設けていないため、どの企業の取り組みが良いか悪いかは言えない」と述べた。しかし、次回の調査ではForrester独自の評価基準を利用して企業の取り組みを分析するとしている。また、「アジア地域の調査も実施したい」とMines氏は述べている。