カード詐欺からおサイフを守れ!--英国で導入進む「Chip and PIN」とは

文:Sylvia CarrおよびTim Ferguson(Silicon.com) 翻訳校正:株式会社アークコミュニケーションズ、坂野裕史

2007-07-13 08:00

 イギリスでカード詐欺を撲滅する切り札として、磁気を使うカードに代わって導入されたChip and PINカード。この新しい方式が導入された経緯、導入の効果、今後の見通しについてQ&A形式で紹介する。

--「Chip and PIN」って何のこと?

 「Chip and PIN」のカードは、見た目は普通の磁気ストライプカードと同じだけど、カードの中にコンピュータチップが入っている。使う人にとっての大きな違いは、買い物のたびにサインをする代わりに、レジのキーパッドに4桁の数字を入力する点だ。ATMで現金を引き出すときとそっくりだね。これは別に目新しいものではなくて、イギリスに入ってくる前に、フランス、オーストラリア、ニュージーランドで10年ぐらい使われていたんだ。

--昔は自分の名前をサインする必要があったよね。

 そう。イギリスでは2006年に、小売と銀行にかかわる取引が普通の磁気ストライプ技術からChip and PINに移行されたんだ。ほとんどの店はChip and PINに切り替えたけど、このカードを使いたい店がまだ切り替えていなくても、新しいカードを使用できる。正当な取引だと証明するために必要なのは、PINの代わりにサインすることだけさ。海外で使うときも同じで、新しいカードを使えるけど、PINを入力する代わりにサインする必要はあるだろうね。

--じゃあ聞くけど、どうして切り替える必要があったの?

 Chip and PIN技術は詐欺を減らすのに役立つであろう、というのが公式見解だ。カード会社によると、この損害額は年間5億ポンドに上るそうだ。サインを偽造するよりPINを推測する方が難しく、Chip and PINカードは磁気ストライプカードよりも複製しにくい。ただ、カード会社は切り替えコストが10億ポンドを超えると言っていることには注意すべきだね。詐欺を減らすことで相当な金額を取り戻せると期待しているようだ。

--この技術じゃなくてバイオメトリクスを使ったらどうなの?

 いいところを突くね。詐欺を減らすために他の技術もたくさん検討されたんだ。カードに写真を付ける方法、指紋や虹彩のスキャンなどのバイオメトリクスソリューション、音声認識とかがね。でもこれらはすべて、実現するのにコストが高すぎるとか、信頼性が十分でないと判断されたんだ。

--どうしてベストな方法じゃないの?

 ベストではないと言っているわけじゃない。Chip and PINがなぜ採用されたか、そしてどれだけの効果が得られるのかについて、相当多くの議論がなされたことを指摘しているだけさ。多くの人がまず心配したのは、持っているそれぞれのカードのPINを覚えておき、同時にできるだけ推測しにくいPINにする必要がある、ということだ。特に、PINを入力したり覚えておいたりすることが難しい、視覚障害者や身体障害者の人たちにとっては大きな問題だ。これに当てはまる人は皆、サインで取引を続けられるかどうか、カード会社に問い合わせる必要がある。

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